ふしぎなふしぎな子どもの物語

ふしぎなふしぎな子どもの物語

2021年7月24日

71

「ふしぎなふしぎな子どもの物語 なぜ成長を描かなくなったのか?」

ひこ・田中 光文社新書

 

はーこさんから教えていただいた本。はーこさん、ありがとうございました。おもしろうございました。
 
物語と言っても、児童文学だけではない。テレビゲーム、テレビヒーロー、アニメ(男子編、女子編)、世界名作劇場、漫画、そして最後にやっと児童文学。様々なサブカルチャーの歴史と考察が語られている。それらを経て、子どもにとっての物語というものについて、持論が述べられ、かつ、その後にあった被害日本大震災についても追記されている。人間には物語が必要である、という視点に立って。
 
これらのサブカルチャーの歴史をたどることが、実はとても大切で有意義なものである、というか、私にとっては意味あることだし懐かしくてたまらんよ、という気持ちになる本であった。テレビや漫画を制限された子ども時代だったので、知らなかったこともたくさんあるのだが、知っている部分は感動するほど懐かしく、かつ、それが与えた影響って結構あるんだな、と改めて気がつく。知らなかった部分は、ああ、リアルタイムで見たかった!!と思ってしまった。
 
児童文学の扱いは、やや軽めだが、私が大事だと思っている物語はちゃんと取り上げてあって、お見事!!と思う。男性が作る女の子向けアニメがどのような変遷を辿ったのか、という分析はとても鋭くて、感心してしまった。
 
この明晰で鋭い分析は、記憶だけでなしうるものではない。テレビゲームの主要どころは全部プレイし直したとしか思えないし、アニメもちゃんと見なおしたよね、と思う。丁寧な作りだ。時間かけてるだろうなあ。当たり前かもしれないけど。
 
読み返したら、自分の子ども時代の文化史の半分以上をおさらいできたような気分になった。そう、生きることは、物語との共存である。

2016/8/30