ワタシは最高にツイている

ワタシは最高にツイている

2021年7月24日

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「ワタシは最高にツイている」小林聡美 幻冬舎

2004年から2007年の「星星峡」(って何だ?と思ったら、幻冬舎で出している雑誌でした。)連載を集めたもの、プラス書きおろしの本。

小林聡美ちゃんのエッセイはいつもきっぱりしていて好きだ。
このご夫婦、いいと思ったんだけどなー、もたなかったんだな、残念。
結婚会見の時、「うでを組んでください」と言われて、ふたりともとっさに自分で腕組みをしてみせたのが印象的。
人前でイチャイチャなんて、死んでもしないこの二人、合ってると思ったんだけどな。

2004年頃はまだそんなに問題が起きていなかったのか、時々「オット」が文中に顔を出します。
といっても、仕事が忙しいから、一緒に旅はしない、みたいな記述の中ですけどね。
それでも旅先で、ちゃんと犬たちの世話をしているだろうか、とオットを(ってか犬たちを?)気遣う部分はあります。

なーんて、女性週刊誌て木読み方をしちゃう私。
だめねー。
本の題名にもなったエッセイは、聡美ちゃんらしくて面白い。

一体なにがそうさせたのか。気がつくと、本屋のレジで会計をすませ、買った本を胸にそそくさと家路につくワタシであった。
今のテーブルの上で袋から取り出された本は、
「愛されてお金持ちになる魔法のカラダ」
という、恐ろしくも恥じらいのないタイトルの、いわゆる自己啓発本である。(中略)
内容をものすごくはしょって言うと、毎日ウォーキングを最低一時間して、一日二食にして、なりたい自分をイメージし続けると、どんどん愛されて、どんどんお金持ちになって、もう、幸せがドミノ倒しでやってくる、というのだ。(中略)
しかし、そんなふうにいつも脳みそをハッピーにしておくという技こそ、最も修行の必要な離れ業なのではないのか。朝起きた時点で、すでにぼんやり具合が悪い感じの日もあるし、ハッピーな気分で歩いていたら、穴ぼこに足を取られて大転倒してしまうこともないわけではない。それとも、そんなときでも
「痛てっ。あ。転んだけど、膝の骨折だけ。ラッキー」
と思えというのであろうか。すごい。それはすごいことである。それに、脳みそがいつもハッピーなヒトって、イメージとして、おめでたい、と言うか、浮かれやがって、というか、落ち着きやがれ的なオーラで、周りの人間をイラつかせはしないのか。

というわけで、いつの間にか友人の手にその本はわたり、彼女から携帯にメールが来る。

「ワタシは魅力的なオンナ。モテて困る。ところで、今度の日曜日、みんなで馬肉を食べに行きませんか。」

聡美ちゃんの返事はこんな感じ。

「とってもチャーミングで道行くヒトも釘付けな。ツイてるワタシです。ツイているのに、風邪気味なので、日曜日はやめておこうかな。どうぞ、その日は、みんなと行ってきてちょうだい。そして、今度、馬肉食べに行くときは、みんなが美味しかった!という、お勧めの一品を迷いも間違いもなく食べられる!スゴい!アタシってやっぱりツイてる!では」

(引用は「ワタシは最高にツイている」小林聡美 より)

ポジティブになるのって、大変。

2011/10/3