ルポ資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄

ルポ資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄

2021年7月24日

「ルポ資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄」白戸圭一

私が子どもの頃の社会科の教科書には、まだ、南アフリカのアパルトヘイト政策が載っていて、それから、ネルソン・マンデラが大統領になって、彼は救世主になるのかと思っていた。
けれど、長い時がたっても、南アフリカの黒人たちは決して豊かにはなっていなかった。
ほんの少しは、豊かな黒人もいる国に成ってはいたようだけれど。

南アフリカ国内における経済格差。
とてつもなく裕福な人間のすぐそばに、信じられないほどの貧困がある。
貧しい者しかいなければ、暴力は生まれない。
格差があって、それが激しければ激しいほど、憎悪が生まれ、暴力が起きる。
また、アパルトヘイトを持続させるために南アフリカ政府が周辺黒人国家の不安定化を目論み、モザンビークの内戦を利用した歴史がある。
その結果、多くのモザンビーク人が南アフリカに入り込み、犯罪と暴力の温床ともなっている。
いつ、暴力にさらされ、奪われ、殺されるか分からない社会で、人は、人を大切に思ったり愛したりすることを忘れる。

石油資源の豊かなナイジェリア。
しかし、石油の掘り出される村には電気すら通じていない。畑は荒らされ、水は汚され、石油の産出で、人々は、ただ、貧しくなった。

レアメタルの取れるコンゴでは、虐殺が常態化し、治安がつねに不安定であることが、ある人々の収入源となる。

海賊が問題となるソマリアは、完全なる無政府状態で、いわば日本の戦国時代のような有様だ。
武器を持ち、強いものの言いなりになる以外に、生きる道はない。

恐ろしいほどの現状は、しかし、他人事ではなく、そこには、グローバル経済が息づいている。
日本に流れ込む石油、日本に密輸入される麻薬、日本の行う経済援助。全ては、アフリカとつながっている。
しかし、日本で十数人が殺されれば大騒ぎとなっても、アフリカで常態化している虐殺には、誰も見向きもしない。

なぜ、こんなになってしまうんだろう。
暴力と、貧困と、格差と、一部の人間の繁栄。
トップに立つものの、絶対的な腐敗。
そして、権力を得るためには、人の命を命とも思わないやり方。

私たちは、それとは無縁な、きれいで美しい文化の国に住んでいる・・・のだろうか?
私たちの手は、血に汚れてはいない、と言い切れるのだろうか。

考え込んでも、全然分からない、前の見えない、そんな本だった

2010/3/17