ジニのパズル

2021年7月24日

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「ジニのパズル」崔実(チェシル) 講談社

 

在日コリアンの女性が書いた小説。実話かどうかは書いていないけれど。
 
アメリカの学校で、退学に追い込まれそうな主人公。彼女はもともと日本人学校から朝鮮人学校の中学に入学した経歴があった。そこからハワイ、そしてオレゴンの学校へ。
 
北朝鮮がテポドンを打ち上げたその年、朝鮮学校の制服を着た生徒が町中で暴行を受ける事件が頻発した。その時、彼女もチマチョゴリの制服を着ていた。彼女の受けた侮辱、学校への反発、様々なものが彼女を「革命」へ押しやっていく・・・。
 
先日、テレビで宇多田ヒカルを見た。自分はいつもアウトサイダーだった、と彼女は語っていた。日本にいると帰国子女と言われ、人種のるつぼと言われる場所ですら珍しい日本人の女の子と言われ、育った家庭はどうやら普通の家庭とは違っているらしいと感じ、歌を歌っていても特別扱いされ。だからアウトサイダーの気持はよく分かる、と淡々と語っていた。それを聞いている私はそんなに劇的なアウトサイダーではなかったけれど、常に転校生だったから、アウトサイダー的な気分はよく知っていて、そうだよね、と思った。
 
この本は、そのアウトサイダー感覚がもっともっと強烈に表された小説だ。主人公の祖父は戦後の帰国指導で北朝鮮に帰り、利用しつくされて死んだらしい。帰った祖国で彼はアウトサイダーになった。日本に残された家族もアウトサイダーであり、同胞のいる学校へ入っても、やっぱりアウトサイダーになった。ハワイでも、オレゴンでも。
 
そんな彼女が何を考え、何を掴んだのか。余計なことだけど、頑張れよ、おばちゃんも頑張るから、と言いたくなるような、そんな本だった。
 
傲慢かな、私。

2016/10/12