旅したからって、何が変わるわけでもないけどね・・・。

旅したからって、何が変わるわけでもないけどね・・・。

2021年7月24日

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「旅したからって、何が変わるわけでもないけどね・・・
旅するハナグマ世界なんとなく旅行記」

川村三太夫 ダイヤモンド社

地球の歩き方「今、こんな旅がしてみたい 第一回コミックエッセイ対象」優秀賞受賞作品。

作者が長年に渡り色んな国を旅したときのことを、アチェーニという謎の生き物に成り代わって描いた作品。本の中では日本からシンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、カンボジア、ベトナム、中国、ラオス、ミャンマー、インド、パキスタン、イラン、トルコなどを渡り歩いていくが、実際には一回の旅のエピソードというわけではなく、いろいろな旅で出会った出来事をごっちゃにして描いているらしい。何度も同じ国を訪れることもあるという。

バックパックを担いで世界中を放浪する人の本を読むのが好きだ。自分自身は当たり前の生活を送っていて、色々なしがらみもそれなりに大事で、すべてを捨てて一人で旅に出てドミトリーで「沈」なんてことはしようとも思わないが、それができる人に憧れるし、うんと若かったらできたかもしれないなんて思うこともある。

世界中を回って、そこでごく普通に生活している様々な人と出会って、困ったり助かったり喜んだり悲しんだり支えたり裏切られたりすることは、きっと本を何冊も読むことよりずっと生きた力になると思っている。机に向かって活字を読み、物を覚えることだけが学ぶことではないとも思っている。

だが、その反面で、ただ旅を続けていて、それが何になるんだ?という作者が抱えている根源的な疑問も、同時にある。豊かな国に生まれ育ったおかげで大した苦労もなくお金を手に入れて、何年も旅できちゃう日本人と、生まれ育った貧しい国で、少しでも稼ごうと旅人と関わる人がいる。どちらも、たまたまそこに生まれてきたと言うだけなのに。

そんなことにも、旅をするから気がつける。自分がちっちゃいことも、世界が広いことも、でも、みんなおんなじような人間だということも。

もう少ししたら、旅に出ようと思っている。バックパック担いでフラフラできるような歳じゃなくなったけれど、できるだけ自分らしい旅がしたい。そんな夢を見ながら、この本を読んだ。

2016/9/21