私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか

私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか

2021年7月24日

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「私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか

~地下鉄サリン事件から15年目の告白~」

松本聡香 徳間書店

「止まった時計」は麻原彰晃の三女の著作だったが、これは四女の書いた本である。教えてくださったおはなしでてこいさん、ありがとう。

読みながら苦しくて辛くて嫌になった。これは虐待され、放置された子どもたちを周囲の大人たちが寄ってたかって利用しようとしたり、社会的に虐待や放置を行ったりした記録そのものでもあるからだ。

麻原夫妻が親としてとんでもない人たちだったことは間違いない。それでも子供はどこかで親を慕ってしまう。この四女も、親を否定しながら、愛したい思いを持ち続けているのがわかる。それがつらい。

彼女を本気で助けようとした人もいただろう。でも、そのつもりで利用したり、うまく行かなかった人が多くて、今でも彼女は苦しみの只中にいつづけいてる。親の罪を負わされた子ども。彼女がいじめられた件で話しあうさなか、「あなたの命はひとつだが、あなたの親は何十人も殺したのだから」等と言ってしまう校長がいる。

江川紹子さんが一時期彼女の後見人になったこともあった。江川氏は、彼女を普通の人間として育てたかったのだろうけれど、それは彼女には伝わらなかった。難しすぎたのだろうね、とは思う。だけど、なぜ、私たちの社会はこんな虐待にさらされてきた子どもを助けることすらできないのだろうと思う。江川氏が悪いのではなく。社会全体で、子どもたちを大事に育てる姿勢があったら、もう少し彼らは楽になれたかもしれないのに。

どうしたら、いつになったら彼らは幸せになれるのだろう。これは、私たち大人すべての責任でもある。

2015/12/19