ジプシーにようこそ

2021年7月24日

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  「ジプシーにようこそ」 たかのてるこ 幻冬舎

「ガンジス河でバタフライ」以来、新作は全部読むようにしているバックパッカーの旅行記。作者は東映のOLだったのだけど、最近、どうも退職したらしい。

今回は、「ガッジョ・ディーロ」という映画に触発されて、ジプシーに会いに、ルーマニアへ。例によって、行きあたりバッタリの、現地人溶けこみまくり旅であった。

しかし、一人旅じゃないのよ。高橋くんというカメラマンが一緒。あれれ、もしかして、たかのてるこ、この人と結婚したんじゃなかったっけ。でも、文中には、結婚なんてしないと書いてあるしなあ。恋人同士だったっけか。

しかししかし。
旅の記述の中では、まるでたかのさんは一人で旅をしているかのように描かれている。様々なアクシデントも、一人で乗り越えているようで、ところが、時々ひょっこりと高橋くんが顔を出す。しかしながら、ほとんど会話もなく(文中ではね。)、現地の人と関わっているのはたかのさんだけのような感じ。それがなんだか気になる。

ジプシーという人たちは、実は発祥はインドらしい。そこから中東、ヨーロッパを旅して、今じゃ世界中あちこちを放浪している。ルーマニアには、定住したジプシーもたくさんいる。ジプシーは差別の対象となっていて、呼称も「ロマ」としようという運動もあるらしいが、たかのさんはここではあえてジプシーと呼ぶそうだ。

ハデハデの衣装や生活用品、所有の概念の欠如、若いうちの結婚、家族の絆を大事にする、などなど、これは実は日本のヤンキーと同じである、とたかのさんは看破する。うーん、そうかも。

地理や歴史を学校でずいぶん学んだけれど、だれもジプシーについては教えてくれなかった、と思う。世界を放浪する人びとがこんなにいたなんて。ヨーロッパを旅すると、出会うことはあるけれど、日本で言ううところのプーのおじさんのような存在かと思っていた。歴史的背景にまで思いが至らなかった。なるほど、発見である。

しかし、たかのさんの文体はやかましいなあ。もう少し落ち着いた筆致になったらいいのに、と思うけれど、それだと味がなくなるのかもしれない。

2011/11/16