パトロネ

パトロネ

2021年7月24日

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「パトロネ」 藤野可織 集英社

豊崎由美が「本の雑誌」で傑作だって褒めていたから読んだのだけど。うーむ、わからんかった、まったく。私に文学は向いていないのかなー。

妹がいたことも忘れていた姉が妹とマンションの一室に同居するのだけど、妹は一言も喋らない。二人は同じ大学の同じ写真部に入って、部室では普通に話すのだけどね。姉はロフトに、妹は下の部屋で暮らす。で、姉は妹を上からあれこれ観察するのだけど、妹が何を考えているのかは最後まで明らかにならない。

姉の顔の皮膚が赤く腫れ上がり、皮膚科に通うのだけど、皮膚科の医師とも、話はするのに、意思は通じていない。いつも同じ診察、同じ診断、同じ薬。まあ、こういう意思の通じなさは、私も体験したことがあるけれど。なんというか、この世と私は通じ合っているのか?という不安がどんどん膨らんでいくような小説では、ある。

もう一遍入っている「いけにえ」という小説は、なんと芥川賞候補にもなったそうなのだけど、さらにわからない。こちらの方は、56歳の主婦が主人公だから、私としてはむしろわかりやすいはずなのだけれど、全然わからない。ただ、「いけにえ」の正体が妙に淡々としておっそろしい、という読後感だけ。普通のあんまり賢くないおばさんを、鋭く賢い若い女性が分析するとこうなるのかね、とちょっと思ったりする。

あー、ごめん、私には、わからん。

2012/7/8