フジツボ 魅惑の足まねき

フジツボ 魅惑の足まねき

2021年7月24日

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「フジツボ 魅惑の足まねき」 倉谷うらら 岩波書店

 

なぜ夫がこの本を図書館から借りてきたのかわからないが、おそらくナマコ好きの宮田珠己経由ではなかろうかと推察される。筆者は海洋生物研究家。「自分でもあきれるほど、フジツボに心を奪われている。」そうだ。
 
フジツボ研究者に「フジツボを一言で表すと?」と聞いてみると「可愛い 優雅 チャーミング 丈夫 繊細 ワクワクする 可憐 ハラハラさせられる 興味がつきない 打たれ強い 魅惑的 デリケート 奥が深い(ダーウィンの気持ちがわかる)」などの回答が返ってくるという。
 
最後の「ダーウィンの気持ちがわかる」は何かというと、ダーウィンはフジツボ解剖用の特別な顕微鏡を誂えるほどのフジツボ愛好家だったらしく、動物学の研究者に「私の愛しのフジツボ」について書いて送った手紙が残されているほどだという。
 
ダーウィン家の子供は、フジツボ解剖用にカスタマイズした顕微鏡の前で連日F(フジツボのこと サワキ注)解剖に没頭する父を見て育った。子どもたちも喜んでスライド作りの手伝いをしていたという。それがあまりに日常の光景だったため、二男のジョージが近所のラボック家の子どもに「君のおとうさんはどの部屋でフジツボするの?」と聞いてしまう。
 どの家庭でも父親はフジツボを研究するものだと思いこんでしまっていたのだ。
 
(引用はすべて「フジツボ」倉谷うらら より)
 
そもそも私は本書の最初に書いてあるとおり、フジツボは貝の一種だとばかり思い込んでいた。ところがなんとエビヤカニの仲間、甲殻類なんだそうだ。そりゃ悪かった。
 
海辺の海岸で膝を擦りむいて怪我をした人がしばらくして葦に激痛を感じるようになりレントゲンを撮ったら体内にフジツボが繁殖していた、という恐ろしい都市伝説もこの本は追求している。
 
フジツボに関わるあらゆることに言及したのがこの本なのである。フジツボ愛があふれていて、つい笑っちゃうほどであった。

2014/12/23