本格小説

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2021年7月24日

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「本格小説」水村美苗 新潮文庫

「母の遺産」が面白かったので、図書館で借りてきた。そうしたら、面白いのなんのって。水村美苗ってすごい!久々にがっつり小説を読んだという気がした。

これって「嵐が丘」なのよね。でも、「嵐が丘」より面白いかも、とちょっと思ってしまった。と言っても、私が「嵐が丘」を読んだのは中学生とか高校生の頃だからなあ。三回以上は読んでいると思うけれど、今思うと何もわかっていなかったのかもしれない。あの頃は、恋なんて妄想の世界でしかなかったもの。

十代の私は、ヒースクリフとキャサリンの恋の行方にじりじりしていた。なんでうまくいかないのかなあ、ここでひと言、違う言葉を選んだら、うまくいくかもしれないのに、ちょっと我慢すればいいのに、と地団駄踏む思いだった。何度も読んだのは、今度こそうまくいくかもしれない、なんて思ったからかも。いや、そんなはずはないでしょ、何度読んでも同じです。って知ってるけど。

そんな感覚を、久々に思い出しながら読んだ。この本ではヒースクリフは東太郎で、キャサリンはよう子だ。彼らが日本人だからなのか、私が曲がりなりにも恋をしたり結婚をしたり子どもを産んだりと経験値が上がったからなのか、物語はより現実味を帯び、面白さも格段に増した気がした。

とにかく読み始めたら、ぐいぐい引きずりこまれていく。最初、「嵐が丘」本編に入る前に作者自身とヒースクリフ、じゃない、東太郎との関係に関わる短い物語があるのだけれど、そこからもう夢中になってしまった。

興奮して、夫に「これって嵐が丘なのよ」と話したら、なんと夫、「嵐が丘」を読んでいないそうだ。えー、そうなの?必須科目の古典だと思ってたけど。

考えてみたら、「嵐が丘」ってワイルドな男と、育ちが良くてお金持ちの男に同時に惚れられるっていう女子が大喜びの物語だものね。そうか、女子向き古典なのか、と改めて発見。

そうよね。面白がって読んでいるけど、もし、夫が私ともう一人、育ちが良くて美しい金持ちの女と同時に付き合って間で苦しんでる、なんて状況になったら、冗談じゃないわ!!でおしまいだものねえ・・・・。

などと妄想は広がっていくのでありました。

2014/4/10