辺境メシ ヤバそうだから食べてみた

辺境メシ ヤバそうだから食べてみた

2021年7月24日

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「辺境メシ ヤバそうだから食べてみた」高野秀行 文藝春秋

新刊が出たら、とりあえず即買いの作家の一人、高野秀行である。「はじめに」で

注意してほしいのは、食事中に読まないこと。中には強烈な刺激を伴うものもある。

と書かれている。このブログにも同様の注意を払っていただければ幸いである。

ところで、私はゲテモノは割と大丈夫だ。昆虫食やカエルのたぐいはたいてい平気だし、蛇やワニも試したことはないが、いけると思う。ホルモンは、噛み切れないものや匂いが強いのは無理だが、煮込みなら好きだ。だが、コンゴの長距離移動バスの中で、ミカンかお煎餅をおすそ分けするかのように猿の燻製肉が回ってきたとしても、高野さんみたいに、ガブッと噛みちぎって次の乗客に回すのは、ちょっと無理かもしれない。

世界中の辺境を旅してきた高野さんは「食の可動域」が広がったという。ヤバそうなものでも、

現地の人たちが食べているのを見ると一緒に食べずにはいられない。食べてしまえば意外に美味しいことが多い。すると、また食の可動域が広がった喜びに包まれる。感覚が「ヤバそうだけど食べてみよう」から「ヤバそうだから食べてみよう」に変わっていく。人間、こうなると歯止めがきかない。
(引用は「辺境メシ」高野秀行 より)

のだそうだ。実際に、この本の中で彼は猿の脳みそや芋虫、ラクダの肉はもとより、口噛み酒や水牛の脊髄、赤アリの卵にヤギの糞のスープなどなど、信じられないものを次々に食べていく。そして、変な食べ物の探索はライフワークである、とまで言い切る。

食は文化である。世界中の政治や経済、文学に演劇、舞踊など様々な文化が多くの人の手によって調査、研究されてきた。だが、変な食べ物という文化について研究した人は、まだそれほどいないのではないかと思われる。高野さんの調査研究は、実は、非常に貴重なものなのではないか、と私には思えてならないのである。

高野さん、これからも変なものを食べ続けて教えてください。楽しみにしています。

2018/11/11