評価と贈与の経済学

評価と贈与の経済学

2021年7月24日

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「評価と贈与の経済学」岡田斗司夫FREEex 内田樹 徳間書店

たいそう面白い本だった。まったく逆の価値観や感性をもつ二人が対談したら、見えている未来が同じだった、と内田ファンでもある岡田斗司夫がまえがきで嬉しそうに書いている。本当にそのとおりではあったのだが、実は私は一年以上も前に、この二人の相似性についてすでに発見して指摘しているのである。えっへん。

私は岡田斗司夫の提唱するFREEexの仕組みについては、どうもよく理解できない。というより、よほど才能と魅力のある人間でないとその制度には乗っかれないと思ってしまう。また、内田先生の言う学問に対する態度についても、まったくそのとおりだと思いながら、そんなこと言っても現実に目の前の中学生に受験勉強せよと言わねばならないのだよなあ、と溜息をついてしまう。私はやっぱり、どうしても現実の中で小ずるく生きていくしかないありきたりなおばちゃんなのだ。

だが、それは置いといていいとするならば、彼らの話す言葉は実にすんなりと私の頭のなかに入り、そうだそうだと頷けるものばかりなのだ。なに、そんなに難しいことを彼らは言っていない。

こんな年令になるまで生きてきて、結局私が気がついたのは、人間って嘘をついては生きられないということだ。もちろん、嘘を突き通すこともできるけれど、それはなかなかしんどいことだし、結局自分を幸福にしない。それから、人を貶めて生きるのも、たいそう心苦しい。どんな人にも敬意を払い、認めるものは認める勇気を持ち、できる親切はちゃんとして、ごく当たり前に真っ直ぐ生きるのが、実は一番楽だし、いろんなことがうまくいく。

そういう基本的なことが、この本全編を通して書いてある、と私は受け取った。当たり前なのに、目から鱗が落ちる、たいそう楽しい本であった。

2013/10/29