三度目の恋

三度目の恋

2021年7月24日

169

「三度目の恋」川上弘美 中央公論社

「某」以来の川上弘美である。これは、「伊勢物語」をモチーフにした小説。ナーちゃんという、すべての女性の心を鷲掴みにしてしまうような男性に恋をした現代女性と、江戸時代の花魁と、平安時代の女房の物語が同時進行する。ナーちゃんに恋をした梨子は、夢の中で花魁になり、また、女房になるのである。在原業平や薬子などが登場して、今と昔を行きつ戻りつ、現代社会でもナーちゃんは浮気をするし、梨子も小学校時代の用務員さんと逢瀬を重ねたりして、非常にややこしい。

それにしても流れるように物語は進む。川上弘美はストーリーテラーとして素晴らしい、と思うね。新幹線の中で、もう少し駅が遠ければいいのに、と思わせられてしまうのだもの。

在原業平が、現代では「ナーちゃん」って。と、少し落ち着いたら笑えるのだけれど、いやはや、物語の中のナーちゃんは不思議と魅力的なのでありました。

2021/2/26