伊勢と出雲

伊勢と出雲

2021年7月24日

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「伊勢と出雲 韓神と鉄」岡谷公ニ 平凡社

 

出雲大社も伊勢神宮も、神社の総大将みたいな大きくて力のある有名な神社である。これらの神社が、実は渡来人や製鉄と大いなる関係性があるということを説くために実際に出雲や伊勢付近を歩き回って検証したのがこの本である。
 
伊勢も出雲も、地名には古く新羅に因んだものが多く、神社や社も新羅由来のものが多く残されている。だが、その記憶は深く奥底に沈み、地元の人にも知られていない場合が多い。
 
出雲は朝鮮半島都の交流の中心となる土地であった。伊勢には、そこから渡来人が流れてきている。五十鈴川は砂鉄を置く含んだ土地であって、新羅の製鉄技術が流れ着いた場所でもある。スサノオは、新羅から来た武将であった・・・。
 
地名じゃ神社に残された遺物、そして風土記や日本書紀の記録から古代の人びとの流れを想像し、裏付けていく過程は、ミステリにもにて面白い。この著者は、実際に足を運びながら、神社の場所がわからなくなってタクシーの運亭主と揉めたり、電車の乗り換えがうまく行かなっくて駅員に食って掛かったりして、時々現実に返ってくる。それがまた、ふしぎに面白くもある。それにしても、事前にネットで調べればわかるじゃないか、なんて思いながら読んでいたが、御年88歳になられるご高齢の著者でいらした。ネットは無理かも。よく歩かれたものだなあ、と改めて感心する。
 
歴史の跡を辿りながら、知られていない過去を想像し、世界をふくらませる楽しさを思う。こんな風に旅してみるのもいいかも、と思う一冊であった。

2017/10/31