ソルハ

ソルハ

2021年7月24日

「ソルハ」 帚木蓬生  あかね書房

子ども向けではありますが、辛い本でした。

アフガニスタンのビビという少女が主人公です。
カブールに住むビビのお父さんは、発電所の技師です。
発電所が止められてしまったけれど、シャフトが悪くならないように、毎日、点検に行っています。
大事な部品は地面に埋めて隠してあります。

タリバンが政権をとって、お父さんは牢屋に入れられたし、お母さんは、女の子に教育は必要ないと学校が閉鎖されたので、隠れて教育を行っていて、殺されてしまいました。
女性は、男性の付き添いなしに、外に出ることもできません、顔を出すこともできません、笑っただけで、罰を受けるのです。踊るのも、歌をうたうのも、禁止されています。
いつも料理を作ってくれていたばあやのロビーナは、少数民族の出身で、殺されてしまいます。
サッカーの試合を見に行ったら、試合の合間に、女性が一人、引き出されてきて、石打の刑に処されるところを見てしまいました。

お兄さんのカシムは、反タリバン軍に入って行ってしまいました。米軍が、タリバンを倒しに来ますが、一般人の家に爆撃をしていきます。たくさんの人が死にます。
米軍が爆撃を終え、タリバンが町から逃げ出し、やっと平和が訪れたところで、この物語は終わります。

どうして、こんなことが。と思います。
いろいろな障害や怪我や病気を抱えながらも、頑張って生きようとしている人もいるというのに、ごく普通にあたりまえに生活している人たちが、どうしてこんなふうに殺され、貶められ、踏みにじられねばならないのか、本当にわかりません。
私は大人で、いろいろなむずかしい政治や経済のことも勉強した覚えはあるけれど、それでも、こんなひどいことの理由は、永遠に分からないような気がします。

それにしても、タリバンに、何か理はないのでしょうか。
私の読む本では、タリバンはいつも悪の側にあり、抑圧の側にあり、一筋の理もなく描かれます。
しかし、彼らには、彼らの論理があり、正義がある。でなければ、命を賭してまで、こんなふうに人を殺しにくる動機がないではありませんか。

どこですれ違ったのか。
どこで許せなくなるのか。
どこで憎むようになるのか。
どうすればいいのか。

たくさん本を読んでも、全然、何も分かっていないのだな、と私は思います。

ひとりひとりの人が、自分の生をまっとうできる。
ただそれだけのことが、なんとむずかしいのでしょう。

2010/12/28