君がいない夜のごはん

君がいない夜のごはん

2021年7月24日

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「君がいない夜のごはん」穂村弘 NHK出版

 

いわゆるグルメじゃない、どっちかっていうと味音痴の人の書いた食べ物の本。人がよくて、自制心があんまりなくて、それでいて繊細で優しい人柄がじわじわと伝わってきて、ふわふわと笑ってしまう。
 
賞味期限が切れた途端、コップに口をつけると牛乳が真っ黒になってしまうようになっていればいいのに、という書き出しに、おちびがうんうんと頷いていた。鼻や舌に自信がないから、そういうシステムで教えてほしいらしい。私は嫌だけどなあ。
 
ミニあんぱんの「ミニ」には魔が潜んでいる、というのもおかしかった。ミニだからいいか、と手を出して気がつくと五個は食べてしまうんだって。甘いモノが苦手な私は、それもわからない。
 
でも、「ヴィシソワーズ」に「君は冷たいジャガイモのスープだよね」と話しかけてもそっぽを向かれてしまう、というエピソードは、私もわかる。スパゲッティがいつの間にかパスタになり、タリアテッレとかファルファッレとか、カッペリーニとかが登場してきて、それに歯を食いしばって耐える、というのも、大いに共感した。
 
全体にとほほ感が漂うエッセイで、それが素敵。

2013/10/9