地平線の相談

地平線の相談

2021年7月24日

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「地平線の相談」細野晴臣 星野源 文藝春秋

 

2007年から2013年まで雑誌「TV Bros.」に連載された細野晴臣と星野源の対談をまとめたもの。その間に源ちゃんは病気で回答手術を二回も受けて、言葉通り死にそうになったりもしていた。そのことも淡々と語られている。
 
大ファンだった細野さんとの対談にあたり、源ちゃんが心得として自分に課したのは、
 
「なるべく音楽の話合しないこと、なるべくくだらない話をすること、ファン的なミーハーな立場ではなく、対等に向き合う努力をすること」
 
後のほうで割に音楽の話はしちゃってるけど、あとは大体守られた様子である。確かにくだらない話が多いが、そのそこから醸しだされてくる二人の人間性は、なかなかに心地よいものであった。
 
源ちゃんが西荻窪の坂本屋のカツ丼の話をしているのには驚いた。あのちっちゃな店はどうしてあんなにファンが多いんだろう。昼前になると、ズラッと人が並んで、みんな我慢強くかつ丼を待ってるもんな。あそこに源ちゃんもいたのか。溶け込みそうだな、オーラは別に無いかもな、なんて思う。坂本屋のカツ丼は確かに美味いけど、「普通に」美味いんだよな。
 
大好きな女の子の心の窓を開けたら真っ暗だった、というエピソードを源ちゃんが語っていて、でも好きだから明るくなって欲しいじゃん、頑張ったんだけど・・・というのが妙に切なかった。そうか、頑張ったのか、としみじみ思ってしまうおばちゃんである。
 
人生に大事なことは何一つ語られていないけれど、読めばなんだか心が軽くなる、そんな本だった。好きだぜ。

 

 

2016/6/13