1限目はやる気の民法

1限目はやる気の民法

2021年7月24日

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「1限目はやる気の民法」よしながふみ 白泉社文庫

法学部の楽勝ゼミで、たった一人やる気に満ちた男子学生が主人公。彼は法律に極めてまじめに取り組むのだが、周囲は付属校上がりのセレブで栄光の将来を約束された自堕落な連中ばかり。そんな中、彼に言い寄る男子学生がいて・・・・。

かっこ良くて頭も良くて努力を努力とも思わずにやってのけちゃう登場人物たち。で、彼らはゲイなのだ。それぞれにそれなりの固有の苦悩がある。全然ありふれていない彼らなりの苦悩や葛藤を、淡々とフラットに捉える作者の姿勢がいい。在学中に司法試験取っちゃうとかありえないんですけどー!!と思うけど、サラッとそこら辺は通過しちゃって、もっと重大なのは、自分の性癖とどう向き合うかの方だったりする。実際、そうなんだろうなー、と納得しちゃうね。

法律に邁進する主人公は、「きのう何食べた?」のシロさんを彷彿とさせる。料理もうまいし、意外と乙女なところはケンジの要素もある。ここに原点があったのだなあ。

心理描写も、物語の運びも、素晴らしくよろしいのだが、ただひとつ、性描写が実にしつこくてリアルすぎて、いや、そここそが良いのだよ、とBL好きには言われるのかもしれないけれど、私は引いた。放置しておいたら高校生の娘が絶対手に取るだろうけど、これはどんなもんかなあ、と躊躇してしまう。なんとなく見つかりそうもないところにしまって、それでも見つかったら勝手に読めよ、というところだなあ。
2016/7/22