女子大生、渡辺京二に会いに行く

女子大生、渡辺京二に会いに行く

2021年7月24日

156
「女子大生、渡辺京二に会いに行く」
渡辺京二✖津田塾大学 三砂ちづるゼミ 亜紀書房

三砂ちづるさんの「オニババ化する女たち」は読んだことがあって、複雑な感想を持ったことを覚えている。いいことを言っていて、うんうん、そのとおり、と思う反面、あまりにも配慮が足りないというか、受け取る側の思いを慮っていないというか。無邪気に振る舞っていい年じゃないでしょ、先生、と言いたくなるような気持ちになったもんだ。

それから、内田樹と共著の「身体知 カラダをちゃんと使うと幸せがやってくる」を読んで、これまた複雑だった。というのもね、その時は内田先生と三砂先生はとっても話が弾んでいるにもかかわらず、ふたりとも、相手の言うことはあんまり聞いてなくて、ただ、自分の言いたいことが言いやすい相手であるということを味わっているような感じがしたからなんだよね。

ただ、「身体知 カラダをちゃんと使うと幸せがやってくる」の中で内田さんと語っていたことは、実は、この「女子大生、渡辺京二に会いに行く」にもちゃんとつながっていて、そこはしっかりしてるんだな、とは思ったけど。

渡辺京二さんというのは、市井の学者だそうです。私はまだ著書を読んだことがなかったけど、この本の中で語っていることを読む限りでは、信頼していい人だと思う。

これは、ゼミで渡辺氏の著作「逝きし世の面影」を読んだことをきっかけに、女子学生たちが、卒論を抱えて、渡辺さんに会いに行って、二日間、お話をしました、というライブ本である。渡辺さんの話もいいが、渡辺さんに向かって質問する、あるいは語る女子大生も頑張ってはるなー、と思う。

それにしても、津田塾の才媛というのはつらいなー、と思ってしまう。頭でっかちなのよ、みんな。まあ、大学生なんてみんな頭でっかちだけどさ。私もそうだったし、気づいてなかったし、同じなんだけどさ。この生真面目さ、ひたむきさが、読んでいてつらい、痛い、そして、愛おしい、と思う。

自己実現なんて目指すな、と渡辺氏はいう。そうだよね、と読んでる私も思う。才媛には、自己実現が常に求められているんだな。それも、かなり屈折した形で。それにどう答えるかが、才媛たちの常なるテーマだったりするんだよね。まあ、私は才媛というほどじゃなかったけど、それでも、自分なりにあがいて、ぜんぜん違う方向に、その問題からは逃げ出しちゃったんだけどさ。

賢くて、才媛と呼ばれている女の子たちの苦しみを、私は思う。実際、たくさん見てきたしね、そういう子たちを。だから、彼女たちがこの本を読んで、少しでも楽になったらいいと思う。

この本の中では、三砂先生はあんまり前に出ていないから、複雑な気持ちにはそれほどならずに済んだ。あの先生は、やっぱりクセモノだなあ。

2012/12/26