サムライ

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2021年7月24日

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「サムライ 評伝 三船敏郎松田美智子 文藝春秋

三船敏郎って、実は大変な大物だ。ベネチア国際映画祭で金獅子賞、銀獅子賞、アメリカ・アカデミー賞外国語映画賞、リスボン国際映画祭グランプリ、ベルリン国際映画祭フィプレシ賞、ゴールデン・グローブ章のシルバーグローブ、カルフォルニア大学LA校名誉学位UCLAメダル、仏芸術文化勲章、モントリオール世界映画祭で特別グランプリを受賞している。告別式には仏シラク大統領、スピルバーグ監督、マーロン・ブランド、アラン・ドロン、チャールトン・ヘストン、ジョディ・フォスターなど世界中の著名人からの弔電が寄せられたという。

その割に、あんまり評価されていない。いまや、三船美佳のお父さん、という認識しかないほどだ。それでいいのか?と、この本を読んで、改めて思う。

私が知っている三船敏郎は、「男は黙って」というCMで渋く決めてる俳優だ。でも、本当はいろいろな映画でものすごい存在感のある演技をしていて、黒澤明があれだけ素晴らしい映画をとれたのも、三船敏郎がいたからだ、ということらしい。映画、ちゃんと見なくちゃ、と思う。

なぜ、そんなに忘れられてしまったのか・・・というと、プロダクション経営者としては失敗してしまっていたことや、離婚問題で大揉めに揉めて、イメージが失墜してしまったことや、寂しい老後を送ったことなどが影響しているらしい。

ごつい男のようでいて、極めて繊細で、勝新太郎や中村錦之助が大酒を飲むと最後まで付き合い、彼らが汚したトイレを一人で黙々と掃除するような一面もあったという。でありながら、家庭では酒乱で、妻を殴り、酔っ払って刀を振り回し、銃をぶっ放すなどというとんでもない狼藉もあったという。

どんなに立派な仕事を成し遂げていても、家族に乱暴を働く男は嫌いだ。が、彼はあまりにも寂しい老後で、もうその報いを十分に受けたのかもしれない。

それにしても、若い愛人との破局が宗教問題であったとは。松田美智子はタブーを物ともせず、よく書いたなあ。さすが、松田優作の嫁だったことはある、と思った。

2014/4/16