家と庭と犬とねこ

家と庭と犬とねこ

2021年7月24日

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「家と庭と犬とねこ」 石井桃子 河出書房新社

「ひみつの王国」へのコメントでNOZOMIさんが教えてくださった本。NOZOMIさん、ありがとうございました。

児童文学を読むものすべてが必ず一度はお世話になっている石井桃子さんのエッセイ集。1952年から2002年までのものが収められている。

NOZOMIさんが書いていらしたとおり、一人でまっすぐ誠実に生きるということを教えてくれる本だ。自分の業績や仕事の内容にはほぼ触れず、日常のあり方、生活する日々を描いている。さしてネコ好きでもないのに、思わぬ展開で飼うことになった井ノ上きぬこさん(ねこ)の話や、度々逃亡をはかったデューク(コリー犬)の話が楽しく温かい。

宮城の山奥で農場を営んでいたころの思い出話も胸に染みわたる。本当の生活とはそういうものだと思いながら、農業では身を立てることができないと思い知った経緯が伝わってくる。東北の田舎から東京に出てきた年若い人たちに、石井さんはこんなに心配りしていたのか、と胸を突かれる。

素晴らしい仕事を成し遂げながら、威張らず誇らず見栄をはらず、凛として生き抜いた女性がいた、と改めて分かる一冊だ。

2015/1/7