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「小さなトロールと大きな洪水」トーベ・ヤンソン 講談社
以前、「ムーミン谷の彗星」が順番としては最初だと書いたら、「小さなトロールと大きな洪水」がさらに先だとミカンさんにご指摘いただいて、家にある本を引っ張りだしてみたら、あらら、その通りでした。ミカンさん、教えてくださってありがとう。
と言ってもこの本は1945年に発行されたきり絶版になり、他のムーミンシリーズが完結してから21年後に改めて出版されたという。この物語が書き始められた頃、ヨーロッパでは第2次世界大戦が始まろうとしていた。息が詰まる世の中を笑い飛ばすために、「昔、昔、あるところに」で始まるお話を書こうとしてできたのがこの物語である。以降のムーミンシリーズとはかなりテイストが違っているために、作者は書きなおそうと考えもしたらしいが、それによりこの中に込められたひたむきさや若さが失われることを惜しんで、かなり時を経てそのまま出版するに至ったそうだ。
確かに、普段は世話焼きのはずのパパは家族を捨ててニョロニョロと放浪の旅に出てしまうし、ママとムーミントロールはスニフを連れて暗い森の中をさまようつらい場面が続いて、その後のシリーズとは色合いが違う。私は小さい頃に読んだ「青い鳥」を何故か思い出しながら読んだ。でも、最後にはちゃんとハッピーエンドが用意されているのは、ムーミンらしいところである。
ここから出発して、ムーミン谷はあんな広がりを見せていったのだな、と改めて思う。さあ、この続きも夏の間に読まなくては。私の今年の夏の旅行先は、ムーミン谷だわ。
2016/8/7