小倉昌男 祈りと経営 ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの

小倉昌男 祈りと経営 ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの

2021年7月24日

9「小倉昌男 祈りと経営 ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの森健 小学館

夫が面白かったというので読んでみた。小学館ノンフィク本大賞受賞作品。

ヤマト運輸の「宅急便」の生みの父で、優れた経営者として何冊も本が出され、本人の著作も超一流のビジネス書として評価されている小倉昌男。彼の偉大さについてはもう言い尽くされているかのように見えていたが、森健は、彼が退職後に始めた福祉事業に着目し、何が彼を福祉の道に駆り立てたかを調べ始める。現役時代には福祉に対して取り立てて興味も持っていなかった彼が唐突に福祉関連事業をめざし、巨額の私財を投じた背景に何があったのか。それを追うことで、誰も気づいていなかった、彼が闘っていたものに突き当たる。

良い本だった。どんな優れた仕事を成し遂げた人間にも、あるいはひどいことをしてしまった人間にも、家があり、家庭があり、家族がいる。人間としてその人の成り立ちを知ろうとすると、仕事や社会的に行ってきたことだけ見ていても、足りない部分がある。そこを丁寧に調べ、追った、良いノンフィクションだった。

読み終えて、身につまされることが幾つもある。反省するところもある。人は外見だけ、外的なふるまいだけでは計り知れない、と改めて思う。小倉昌男は誠実な人であった。弱さもあった、脆さもあった。としても、最後まで人として誠意を尽くした。ということが改めて分かる、良い本であった。

2017/4/19