和解する脳

和解する脳

2021年7月24日

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「和解する脳」池谷裕二 ☓ 鈴木仁志

 

脳科学者 池谷裕二と弁護士 鈴木仁志の対談。
面白かったなあ。
 
池谷裕二さんはいつも刺激的。最新の情報をわかりやすく説明してくれる。うちの息子はこの人の本に出会わなかったら、今ごろ大学院で研究してなかったかも。
 
鈴木仁志さんは初めてだけど、闘いの場に立つよりも、できるだけ和解を勧めるという、格闘家じゃなくて心理カウンセラー的な弁護士。その姿勢、好きだぜ。
 
脳科学と法律なんて、どこでどう重なりあうのだろうと思ったら、ちゃんと繋がるのね。
 
『いい』『悪い』っていうけど、脳の中にそういう分けかたは実は存在していなくて、あるのは『好き』か『嫌い』かだけの価値基準なんだそうだ。よく考えれば、そりゃそうだよね。
 
で、法的に、お金にまつわる紛争を扱っていても、経済的合理性の問題のように考えられがちだけど、じつは快・不快、好き・嫌いの問題に行き着くという。そもそもお金って、単なる紙切れで、その価値はシンボル、約束にすぎないのだから、それだけだと単なる期待でしかなくて、最終的に『快』に変換されないと意味が無い。紛争で感情が高ぶると、金銭のもつ情緒的な面が非常に重要になってくる。和解というのは、相対的な『快』を求める方向なんだ、という流れは、じつにわかりやすかった。
 
人間って、社会的な存在で、自分が損してでも周囲に貢献しようというプログラムが結構組み込まれていて、そういう人間の理っていいよね、とこの本を読んでいると思う。なんだか希望が湧いてくるというか。
 
池谷さんがいいのは、たぶん、人間に対するこういう基本的な信頼感があるからだろうなあ。あと、大事なのは脳だけじゃないよ、体ってもっと大事なんだよ、という姿勢も、好き。

2013/12/2