九十八歳になった私

九十八歳になった私

2021年7月24日

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「九十八歳になった私」橋本治 講談社

 

三十年後の近未来小説。というと、どんなにAIが発達してるかとか文明の進歩が、とか思いきや、橋本治が九十八歳になっているという小説。何しろ大変なお歳なので、小説を書いていても、途中で何をやっているか忘れちゃったり、時々寝ちゃったり、指が動かなくなったので休憩したり、たいへんなのだ。
 
で、この大変さ加減が実にリアルなのには感心する。そう、高齢者と日々付き合うと、こんな感じになる。話をしていても、どんどん何を話しているかをその場で忘れるし、疲れたら寝ちゃうし、急にさっきまでできたことができなくなったりするし。
 
社会がどう変わろうが、世界がどう変貌を遂げようが、人が老いるという現実は何も変わらないよなあ、とつくづく思う。生活する、生きる、ってそういうこと。橋本治はちゃんとわかってる。
 
で、そのうえで、結構厳しいことも書いているんだが、書きながらやっぱり寝ちゃうし忘れちゃうんだよね。何故かプテラノドンが復活していて、日光杉並木に繁殖していたりするのが大変だったりするのがご愛嬌。あと、大震災もあったらしいんだが、詳しい話は、やっぱり忘れちゃってるんで、あんまり教えてもらえない。残念。
 
なんか政治に対する無力感とか喪失感が非常にリアルで、悲しくなる。三十年経っても、こんな感じなんだろうなあ。

2018/7/23