屋久島・指宿旅行記5

屋久島・指宿旅行記5

2023年11月14日

最終夜の宿の食事はカンパチのあら煮。目の周りがとろっとして美味しいのなんのって。堪能しました。

さて、朝です。八時に最寄りのバス停に観光バスが迎えに来てくれると言うので待っていると、同宿の女性がやってきて、彼女も乗るという。昨日縄文杉に行ってきたというので「脚、大丈夫ですか?」と聞くと「へろへろです!」だって。足首をぐるぐる回したり、ふくらはぎを振ったりしている。でも、観光しようと思えるんだから、素晴らしい。きっと肋骨は無事なのね。



観光バスが来る。お仲間は全部で七人。本当は島を一周するコースなのだが、夏の大雨で橋が流れてしまったため、西部林道の途中で引き返すことになる。永田いなか浜というウミガメの産卵地には行けないので栗生浜という別のウミガメ産卵地を回るとのこと。さて、出発。

最初は千尋の滝へ。「せんぴろのたき」と読むそうだ。モッチョム岳登山道から少し歩いたところ。花崗岩の美しい岩肌に滝が流れている。水量が多い時はこれがもっともっと広がるんだそうだ。

滝の手前の土産物屋でたんかんジュースを飲む。たんかんは屋久島名産の柑橘。甘くて癖がなくてとてもおいしい。それから、自分用の屋久杉の箸も買った。


移動中のガイドさんの話。ガイドさんは、屋久島生まれ、屋久島育ち。さっき登山道のあったモッチョム岳は、小学校卒業までに一度登るんだそうだ。すごく疲れたけど、楽しかった思い出しかないって。それから、中学卒業までには自転車で屋久島を一周する。海岸沿いでも結構アップダウンがあってきついけど、一日かけて頑張る。中三の担任になると一緒に走らなければならないので先生も大変なんだけど、もっと大変なのは教頭先生で、赴任中は毎年走るんだって。でも、きつい坂はトラックに自転車乗せて先に行っちゃう。「お前ら、上で待ってるぞー」と。人の話って、どっかで読んだ知識だけよりも、実際に経験した話のほうがはるかに楽しいし、よく伝わるものだ。ガイドさんの話は、とても楽しい。

屋久島は、山深い島である。一番高い宮之浦岳は1936m、九州最高峰。栗生岳、黒味岳、と九州の最高峰の上位は屋久島に占められている。島の平地は亜熱帯気候だが、標高が上がるにしたがって、温帯、冷帯と気候が変わって行く。縄文杉のあたりは東北地方くらいで、宮之浦岳は北海道のあたり。小さな島の中で、海岸から山頂へ、気温の変化にしたがって南から北からへと植生が移り変わる植物の垂直分布が見られるのも世界遺産認定の根拠になったそうだ。

さて、それから、中間ガジュマルの木を見学。ただ大きいだけのガジュマルの木を、なんでわざわざ見るんだ?と思っていたが、おお、これは見る価値がある。ガジュマルは、幹の上から気根を下へ伸ばし、地面につくと成長して支柱根となる。このガジュマルの木のそばの民家の庭先には、パパイヤとパイナップルとバナナが普通に植わっていた。南国だ。


次は大川の滝。「おおこのたき」と読む。これも立派な滝。

そこから西部林道をバスは走る。屋久島は世界遺産だと言うが、屋久島全部が世界遺産ではない。縄文杉のあたりや山岳地域、それにこの西部林道の周辺が世界遺産である。というわけで、世界遺産の中を、バスは走る。道にはヤクザルの群もいた。

良い天気だ。空が晴れ渡り、遠くに種子島が見える。口永良部島、黒島もはるかにかすんで見える。

ウミガメの有名な産卵地、永田いなか浜は橋が流されていけないので栗生浜へ。小さな砂浜だが、夏にここで泳いだら気持ちがよさそう。ここでもウミガメが産卵するのだそうだ。



平内海中温泉という場所のそばを通る。干潮の時だけできる温泉があるそうだ。脱衣所も洗い場も何もない、ふきっさらしの温泉。地元のおっちゃんたちの愉しみの場所なんだそうだ。ガイドさんが仕事を始めた頃は、そこも観光名所になっていたけれど、すっぽんぽんのおっちゃんたちがくつろいでいるところに観光客を案内するのが恥ずかしくて、今はそれがなくなって実は助かっているんだそうだ。まあ、そうだろうねえ。

それからバスは宮之浦港のふるさと市場へ。ここで半日観光はおしまい。一日観光の人は、ここでお昼を済ませてからヤクスギランドと紀元杉を見学するそうだが、我々はここまで。ガイドさんにお礼を言って解散。そのままふるさと市場で地元のお刺身定食でお昼にする。

夕方四時の高速トッピーという指宿行きのジェットフォイルを予約してある。時間があるので、昨日定休日だった一湊珈琲焙煎所 へ。ここが鄙にも稀なたいそう美味しいコーヒー屋さんで、すっかりくつろいだのだった。

ちなみに我々、このころには手すりに多少はつかまりたくはあるけれど、一応、階段の上り下りは普通にできるようになっていた。私の肋骨の方は、ロキソニンと固定バンドで、時に痛むが、何とか飼いならせる程度になった。

時間が迫ってきたので乗船場へ。昨日、乗船待合室だと思っていた場所は単なるお土産屋さんで、その後ろの建物に受付がある。そこで飛行機みたいにチェックインして、ベンチで乗船を待つ。と、屋久島の役場の人が来て、簡単なアンケートに答えてほしいって。今回、何泊したのか、旅の目的は何なのか、どこで屋久島について知ったのか、どれくらい買い物したのか、などなど。観光業が主力の島だものね、情報収集は大切。一生懸命答えたら、お礼に屋久杉の箸おきをいただきました。

ジェットフォイルに乗り込む。指定された座席について、シートベルトをしっかりしめる。けっこうな高速で船は走る。さっき見えた種子島や口永良部島なんかがまた見えた。

指宿港から宿までは、歩くと二十分以上かかるそうだが、公共の交通機関がなく、しかも、宿の送迎もない。送迎しないの?と宿に問い合わせをしたら「船の乗務員にお尋ねください」と返信があったので、乗務員のお姉さんにお尋ねすると、黄色いタクシーの予約券をくれる。1と番号が書いてあって、運転手が港でお待ちしますので、この番号の車に乗ってください、だって。そんな手配もしてくれるのねえ。

一時間ちょっとで指宿に到着。ほんとだ、黄色い札をもった運転手さんが待ってくれている。タクシーで宿に到着。お風呂に入って、夕食食べて、早々に寝ました。おやすみなさい。

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