掃除婦のための手引書

掃除婦のための手引書

2021年7月24日

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「掃除婦のための手引書」ルシア・ベルリン 講談社

 

「年末大掃除に向けて、参考にしようと思って借りたの?」と夫に尋ねられた。いやいや、これは実用書じゃなくて短編小説集なのだよ。アリス・マンローや、レイモンド・カーヴァー、リディア・デイヴィスに影響を与えながら、寡作ゆえに知られておらず、一部のディープなファンだけに愛されてきたルシア・ベルリンなんだって。私が知ってるのはレイモンド・カーヴァーだけだけどね。岸本佐知子が翻訳して、クラフト・エヴィング商會が装丁しているのなら間違いないじゃん、と、そこだけで選んで大正解でありました。
 
単行技師の父親、アル中の祖父と叔父、奔放な母に育てられ、三回の結婚離婚をしながら掃除婦、看護師などをして四人の息子を育て、自身もアル中に悩み、後にコロラド大学准教授になり、2004年死去。人生がダイナミックすぎる。短編小説がたくさん収められているのだけれど、一つ一つがぜんぜん違う状況で、別の人みたい。でも、根底に流れるものは同じ。中島らもをちょっと思い出して切なくなる。心を鷲掴みにされるような気持ちになる。こんな人がいたんだなあ、としみじみ。寡作だったんだ。もっと読みたいのに。

2019/12/18