日本の文脈

日本の文脈

2021年7月24日

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「日本の文脈」 内田樹 中沢新一 角川書店

内田樹と中沢新一の共通点は、「男のおばさん」だ。
おばさんのおしゃべりの特徴は、だらだらと話題が展開し、次々と違う話に移り変わっていくことだ。この二人の対談も、一つのことから次へ次へと話題が変わり、取り留めがない。ふたりとも特にまとめる気もないから、これといった結論もないのだが、いつもの内田節に、中沢新一の思想がトッピングされているような感じかな。

印象に残ったのは、例えばこんな部分。

内田  日本のパニック映画といえば『ゴジラ』(1954年)が原型ですけど、ゴジラを退治しに行く芹沢博士だって決して自分から進んでで行くわけじゃない。ちゃんと政府筋から要請されて公式にゴジラ殺しに行くんです。アメリカ映画みたいに、上の人たちはああしろ、こうしろと行ってるけど、あいつらはぜんぜんわかってないからって現場が自己裁量で行動して危地を救うヒーローの話って、日本映画には出てこないんです。

中沢  『ダイ・ハード』(1988年)でブルース・ウイリスが勝手に動き出すと上層部は困るけど、ああいうトリックスターが出てくるからカタストロフが回避できる。日本ではトリックスターが出てこられないんですねえ。

内田  日本的システムの最大の脆弱性はそこですね。日本人は、上からの指示には従順だし、きちんと設計して精巧にものをつくることにおいては能力が高いんだけど、従来の手順では対応できない危機的状況で自己判断で動ける人材を育てるという気がぜんぜんない。

(引用は「日本人の文脈」内田樹 中沢新一 より)

こういうことが、たぶん、原発事故の時の『人災』につながったのだと思う。もっと、危機的状況において冷静に自己判断できるような人づくりが必要だなあ。どうしたらいいのだろう。

2012/7/22