石臼とガラスのくつ

おちびの誕生日は12月の下旬です。クリスマスのすぐ近くです。だから、彼女がプレゼントをもらえる機会は、年末に集中しています。毎年、今頃から、誕生日に何を貰うか、クリスマスに何をお願いするか、は彼女の大きな大きなテーマになります。考えているだけで、わくわくするみたいです。

昨日、学校から帰ってきて「お母さん、サンタさんに頼むものが決まった!」とおちびが叫びました。
「今日、学校できのこを作ったの。すごく楽しかったの。だから、きのこを作る機械を頼むの。」
きのこを作る機械?なんじゃ、そりゃ。
「大豆を入れて、ぐるぐるーっと回すと、お粉が出てくるの。」
うーん、それは、もしかして、「黄な粉」ですかい?
「あ、そうそう。黄な粉、ともいう。」
くれよんしんちゃんかい、きみは?で、黄な粉を作る機械って・・え!!

石臼?!

あまりの突拍子もなさに、母はしばらく悶絶します。
「そう!石臼!石臼が、ほしいの。そば粉も作れるって。」
し、しかし・・・石臼を袋に入れたら、トナカイさんが重くて引っ張れないし、サンタさんも、袋が重すぎて、持って来れないし、なんとか運んでも、ぎっくり腰になりそう。サンタさんって、お年寄りなんだよ。可哀想じゃない?クリスマスの朝、石臼が枕元にあったけど、家の前の道で、トナカイさんがぜいぜい言ってて、サンタさんが倒れてぴくぴくしていたら、困るじゃん!
「そうしたら、生きたサンタさんが、捕獲できる。」
「石臼をどこに置くの?」
「おちびの、机に飾る。」
「重くて、机が壊れるよ」
「じゃあ、枕元に置く。」
「あなたの寝相じゃ、間違いなく、石臼に頭をぶつけて大怪我だね。」
「じゃあ、お父さんの枕元にする。」
あくまでも、石臼を、要求します。ひええええ。

夕食時にも、同じ話題になりました。
「でも、おちびは前には誕生石がほしいって言ってなかったっけ?トルコ石とか、ラピスラズリとか。それはそれで、困るけどさあ」
「じゃあ、トルコ石で出来た石臼にする!」
「トプカピ宮殿かいっ!お前は、スルタンかいっ!」
「ラピスラズリで出来た下敷きとか、そういうのにしたら?もっと実用的にさあ。」
「どこが実用的じゃ!勉強が終わる頃には、腱鞘炎になるぞ。」
「それって、ガラスのくつ、みたいなもんで、聞いた分にはよさそうでも、実際使うとすっごく嫌、ってもんだと思うよ。」
「ガラスのくつって、嫌?」
「固いし、吸湿性はないし。たぶん、履いてたら、足が痛くて、しかも蒸れる。ダンス踊るんだぜ。踊ってたら、汗でぐちゃぐちゃになって、ふやけて、水虫になるぜ。水虫と汗でぐちゃぐちゃの足が、ガラスから透けて見えるんだぜ?脱ぐと、むんむんに足の臭いがして、くせえのなんのって・・」
「このくつがぴったりの方はどなたですか?って、家来が、鼻つまんで探して回るの。で、私ですって、水虫だらけの足を差し出して・・。」
「汚ねっ!」
「・・ってわけで、ね?トルコ石の石臼は、やめたほうがいいよ、おちび。」
「ぜんぜんわかんない。普通の石臼でも、いいよ。」

やれやれ。サンタさん、石臼、持ってこれますか?

2007/10/27