神さまの貨物

神さまの貨物

2021年4月3日

7 ジャン=クロード・グランベール ポプラ社

むかしむかし、大きな森に、貧しいきこりの夫婦が住んでいた。子供がほしいのに授からないきこりのおかみさんは、あるとき、森を走り抜ける貨物列車から差し出されるひとりの赤ん坊を受け取った。その列車は、ユダヤ人たちを移送する死の列車だった。双子を抱えた若いユダヤ人夫婦が必死の思いで窓の外の農婦に我が子の一人を差し出したのだった。

大人たちが、小さな赤ん坊を守るためにたくさんの決断をし、動き、命を落としさえした、短い小さな物語。

そう、ただ一つ存在に値するものー実際の人生でも物語のなかでも、ほんとうにあってほしいもの、それは愛だ。愛、子どもたちにそそがれる愛。自分の子にも、他人の子にも。たとえどんなことがあってもどんなことがなくても、その愛があればこそ、人間は生きてゆける。(「神さまの貨物」より引用 )

若い頃は、愛なんてもの、信じないと思ったこともあった。でも、この歳になるとしみじみわかる。愛だよね、愛。愛さえあれば、なんとか生きていける。とりわけ、小さな子供への愛は、無条件だ。どんな人でなしでも、小さな子供の笑顔に心が緩む。それを改めて思う物語。