箱庭図書館

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2021年7月24日

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「箱庭図書館」乙一 集英社文庫

 

出先で持っていった本が底をつき、帰りの新幹線で読む本がないと言ったら娘が貸してくれた本。乙一はずいぶん昔に「ZOO」を読んだことがあって、怖いものが嫌いな私は、以来、絶対に手を触れない作家だったのだが、背に腹は代えられない。で、読んでみたら、これは、一応、怖い本ではなかった。
 
なんとなく違和感が・・・と思いながら読んだら、あとがきで知ったのだけれど、これは、乙一が読者のボツ原稿をもらってそれをリライトするという企画で作られた本だという。なるほどね。だから、設定とか、乙一本人のものじゃないから、どこか浮いた感じがしたのかも。逆に言えば、人の設定から、ここまで書いちゃうんだな。ってことは、小説ってなんだ?と思っちゃう。内的欲求みたいなものは、人の作った箱の中でも実現できるってことなのか?
 
若いよなあ、痛いよなあ、と思いながら読んでしまった。この世への不信感で手が切れそうだ。若い頃ってこうだったよなあ、なんて思う私は、もう、完全に鈍化したふてぶてしいおばちゃんなのか。
 
ウィキで調べたら、乙一さんは伊集院光の深夜番組の大ファンだそうで、おお、そうか、そういう人があれを聞いているのか、でも伊集院って、基本、めんどくさいくらい真面目で誠実なやつじゃん?そこが、救いになるってことか?などなど、考え込んでしまった。心の中に淀んだ、誰にも話せないきったない部分を笑いのめすことで、なんとか明日を生きていこう、てことか。私も若い頃、ラジオにずいぶん救われた人間なのでわからんでもないが。って、この本は全然ラジオと関係ないのにね。

2018/7/31