言わなければよかったのに日記

言わなければよかったのに日記

2021年7月24日

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「言わなければよかったのに日記」深沢七郎 中公文庫

元々は昭和三十三年に出された本。文庫化されたのは昭和六十二年というから没後のことだろう。

深沢七郎は「楢山節考」と「笛吹川」を読んだ。「風流夢譚」で苦労されたことは知っているけど、それは読んだかどうか忘れたなあ。この人の作品は残酷なほどの苦しい描写が淡々と描かれていた・・・ような記憶が。

この本は、日記というかエッセイというか、軽い読み物で、正宗白鳥や井伏鱒二などの大御所との関わりが描かれている。深澤さんは幼児のように無邪気に大御所にずけずけと不思議な質問をしたり、いきなり押しかけて行ったりしている。皆さんお困りになっただろうなあ。

こういう真っ正直な、自分の思いに素直なところが作品にも投影されているのだろうか。古い日記なのに、今、そこに深沢さんがいたら、結構仲良しになれそうな、不思議な気持ちになった。

2014/10/14