認知症をつくっているのは誰なのか

認知症をつくっているのは誰なのか

2021年7月24日

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「認知症をつくっているのは誰なのか」村瀬孝生・東田勉

「へろへろ」で紹介されている宅老所「よりあい」の代表、村瀬孝生さんと介護ライター東田勉さんの対談本。認知症の問題はつきつめれば薬害の問題だ、という視点を持つ東田さんが「薬を飲まないことが認知症ケアの第一歩だ」と語る村瀬さんに対談を持ちかけたという。

父が要介護3になって、認知症に関わるいろいろな本に手を出した。図書館の書棚にずらっと並ぶ認知症関連の本を片っ端から斜め読みして役に立ちそうな本を選びだそうとするのだが、読みたいと思う本はじつは少ない。

「認知症がみるみる治る奇跡の方法」みたいな本がやたらとある。それはたいがいが医療施設やサプリを宣伝する内容だし、「こうすれば認知症にならない」みたいな本は脳トレのパズル本だったりする。医師が書いた本は、認知症には数種類があって、アルツハイマーとレビー小体とビッグと脳血管性と・・・なんて説明がされている。そして、どの薬をどれくらい飲ませるか、いかにそれが効くか、が延々と書かれている。が、そんなのは、我々家族には関係ない。病院に行って相談すると医師が勝手に診断、処方するのであって、こちらが薬を選べるわけじゃないし、アルツハイマーかレビー小体かがわかったからと言って、こちらが今現在困っていることが変わるわけでもない。

一番役に立つのは介護の現場にいる人のノウハウ本だ。認知症の本人が何を考えているか、どう感じているか、それにどう答えたらうまくいくのか、日々の生活の中から見つけ出した知恵や工夫が一番ありがたい。なんとか乗り切っている人の明るい言葉が一番心にしみてくる。

この本は、認知症なんて呼ばなくても、年を取れば「ぼけとらっしゃる」で大抵は済むわけで、無理に病気に仕立てて薬を飲ませたりするから返って症状が出ておかしくなっている、という実態を明らかにしている。宅老所「よりあい」ではできるだけ薬は飲ませないようにしているそうだ。薬をやめたら、しゃんとしてきたお年寄りがいっぱいいるという。本当に病気としての認知症の人は、すごく少ないんじゃないか、と介護の実感から指摘している。

・・・悩むところだなあ、と思う。私の父も薬を処方されて、最初は姉が苦言を呈して飲ませなかったのだが、進行を止めるためには一日も早く飲んだほうがいいと言われ、飲み始めたらどんどん量が増やされている。飲まない父と飲んだ父を引き比べることは出来ないので、飲むことによって現状が保たれているんだよと言われれば、ああそうですかとしか言い様がないのが我々素人である。

要介護認定を受けるためには認知症の診断が必要である。要介護認定を受けなければ、介護福祉のサービスは受けられない。父が週三回のデイサービスにいかなければ、母は疲労してパンクしてしまう。認知症の診断は我々には必須であり、それには投薬がセットでついてくる。

そもそも、認知症の進行を遅らせる薬がほんとうに効くのかどうか、副作用はないのか、なんてことを我々素人が判断できるわけもない。国が認可し、医師が処方した薬を勝手に拒絶することが父の状態を悪くしてしまったら、取り返しがつかない。どうすりゃいいのさ、と本当に困ってしまうのである。

この本を読んで、そうか、認知症は作られるのか、投薬は薬害につながるのか、と知識としては理解できた。が、だからといって、父の薬をやめさせていいものかどうかは私には判断ができないし、これからどうしたらいいのかも、戸惑うしかないのである。

本当に、困った。

2017/1/18