城跡の謎

城跡の謎

2021年7月24日

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「名探偵カッレ 城跡の謎」アストリッド・リンドグレーン

菱木明子 訳 平澤朋子 絵 岩波書店

尾崎義が訳した「名探偵カッレくん」の新訳。装丁も、挿絵も変わった。前のは箱入りの本だったなあ。

慣れ親しんだ本の新訳はちょっと怖い。今まで抱いていた世界のイメージが壊れてしまいそうだからだ。正直に言って、リンドグレーンでもピッピシリーズは新訳を読む勇気がまだ出ない。大塚勇三の訳した「ピッピロッタ・タベルシナジナ・カーテンアケタ・ヤマノハッカ・エフライムノムスメ・ナガクツシタ」があまりに私に馴染みすぎていて、これが違う名前になると、別の人になっちゃいそうで嫌なのだ。

だが、カッレくんは、意外なことに、それほどの違和感もなく読み通すことができた。「甘パン」が「シナモンロール」になっていて、なんとなく口の中の味わいが違う気がした、その程度だ。カッレくんのほうがピッピよりは年上だからかなあ。挿絵も、本当は前の絵のほうが親しみは感じるが、だからといって違和感はない。結構、いい感じ。そして、気がついたのだけれど、この物語は全然古臭くない。今を生きる子供にも十分通用すると思う。実際のところはどうなんだろう。受けてるんだろうか。

読み返すとあっという間だ。相変わらず、わくわくどきどきと面白い。夏の子どもたちの高揚感にすぐ巻き込まれる。スピーディで、飽きるところがない、素晴らしい物語だ。今の子供達はゲーム機とばかりにらめっこして、こんなふうに秘密基地を持ったり、外を駆け回ったりはしないんだろうか。もったいないなあ。

2020/2/25