読み聞かせの問題

先日、四年生の教室で読み聞かせをしていて、あと少しで終わると言うところで「もういいよ!」と言う声を上げた男子がいました。

読んでいたのは、ラングのくじゃく色の童話集の中の、「海に潮があるわけ」でした。日本にも似た様な民話がありますが、何でもひき出すことのできる臼を手に入れた男が、船に乗って海に漕ぎ出し、塩をひきだしたら、臼の止め方を知らなかったので、どんどん塩があふれ出、船いっぱいになって・・・。というところで、その声が聞こえたのでした。

船が沈むのが怖かったのか、それとももう知っているおはなしでつまらなかったのか、いや、初めて聞いたにせよ面白くもなんともなかったのでうんざりしたのか。理由はわかりませんが、彼は、読むのをやめて欲しかったのでしょう。

担任があわてて彼を諌め、私にもあとで謝罪されましたが、いやいや、そんなことではなくて。せっかく読んでくださっているのに、なんていうのは、全く問題の本質はないのであって。彼が、「もういいよ」と言ったということは、そう口には出さなくても、心の中では同じように思っている子もいたのかもしれないな、と思うわけです。朝から、もうやめて欲しい、と思うようなお話を延々聞かされて、うんざりだよ、と思う子がいる、という事実を、ちゃんと受け止めなくては、と思うのです。

本を読むって、結構まだるっこしい作業なんですよね。壮大な物語であればあるほど、その前提条件の提示や、導入や、描写が長々しくって、本題になかなか入らない。どんなに面白い冒険物語だって、登場人物が紹介されて、その世界がどんな場所であるかが説明されて、それからなにかきっかけが起きて・・・山場に入るまで、やたら時間がかかります。

最近の娯楽は、ゲームでもテレビでもなんでも、いきなり、面白いんですよね。すぐに刺激的なことが手に入る。テレビだって、数秒つまらなければ、リモコンでぱぱっとチャンネルを切り替えられる。刹那的に、面白いことが次から次へと押し寄せてくる。そういうのに慣れちゃうと、本を読んでも、本題に入るまで、辛抱ならんのですね。退屈に負ける。集中力が途切れる。でも、そこを乗り越えて、何とかたどり着くと、結構面白い世界が展開するわけです。想像力を働かせるって作業は、どんなメディアよりも伸び伸びできて、とっても自由な場所と時間を手に入れることができる。

そこまで、何とかがんばって欲しいな、と思ったりするんです。本を読むことの本当の面白さにたどり着けたら、やっぱり人生はそれだけ豊かになるし、きっと何かの助けになる。読み聞かせ活動が、読書への契機になることを目標としている、と言い切ることはできませんけど、あ、面白そうだな、この本、読んでみようかな、と思えるような紹介の仕方がしたい、といつも心がけてはいるのですが。

でも。読み聞かせの十分は、あっという間に過ぎます。いつもいつも面白い本を読みたいと思うけれど、何がどの子に面白いかはいろいろだし、私が面白くても、現代を生きる子にはつまらないこともある。退屈な話を、さもいいことをしていますと言わんばかりに、おばさんが延々と読み上げ、静かに聞いていないと先生に怒られる、のでは拷問です。

読み聞かせという活動をする以上、私たちは、子供達を楽しませる、少なくともイヤだ、つまんない、拷問だ、と思わせない努力をしなければならない、と思います。あーでも。本を選ぶのは、とっても難しい。全学年、全クラスで毎週、わくわくどきどきする物語を読み続けるのは、至難の業、というか、ほぼ不可能です。不可能ですが、目指すべきだろうとは思います。

保護者に、子どもに読んで欲しい本、自分の子ども時代好きだった本のリクエストを募集するお手紙を出したり、先生方にアンケートをとったり、いろいろやってはみています。でも、反応は薄いのよね。図書室で借り出される本は「ゾロリ」ばっかりだし。その一方では、ひどく恣意的な本を読む方もいて、チェックに苦労したりもします。好意を無にはしたくないけど、公立の学校で行う活動には、おのずと制限があるわけでして・・。

ボランティアの人数も減少しています。この冬は寒すぎたのでしょう。お手伝いに来てくださっていた地域の年配の方が、朝は寒くて血圧が上がるので・・と気温の低下に連動して、次々お休みされています。面白い本を選んでください、などというプレッシャーをかけようものなら、本選びに自信がないから、とますますボランティアが減っていくのは目に見えています。

図書室バーコード化のあおりを受けて、図書室の本を自由に貸し出すことが難しくなり、余計,
本選びのハードルが上がっています。もう、問題山積み。このまま、読み聞かせ活動を継続できるのかどうか、考え込んでいます。でも、なんとかしなくちゃ。

よその学校ではどうされているのでしょうね。毎週読み聞かせを全クラスで継続するのは、実は無謀なことなのでしょうか。来期へ向けて、何とか立て直したいと、検討中です。

2008/2/20

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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