連休の旅

11月の連休に、一泊の小旅行をしてきました。
その話を、何回かに分けて書きます。

まず、最初は、「わしの眼は十年先が見える 大原孫三郎の生涯」(2008・10・21ブログ参照)を読んで、行きたい行きたいと思っていた、倉敷の大原美術館へ行きました。

倉敷の駅から、美術館へ向かう道中、白髪の上品な顔立ちの男性とすれ違いました。隣を歩いている人が、聞きながら熱心にメモをとっていて、取材記者みたい。あの白髪の人、どっかで見たことが・・・と必死に搾り出して、おお、そうだ、柳田邦男さんだ!「犠牲 サクリファイス」の。
とまあ、そんな偶然の出会いもありつつ。

大原美術館は立派な建物でした。
立派なのは、建物だけじゃないのよ。
入り口には、ロダンの作品が二点あって、最初に圧倒されますが、中に入ると名画がずらりと揃っていて、驚いてしまいます。
こんなにすいてる所で、こんなに凄い絵がたくさん並んでいるなんて、なんと言う贅沢なんでしょう!!
モネもゴーギャンもルノアールもピカソもモディリアーニもジャコメッティもいるじゃありませんか!

私が家に持って帰りたくなったのは、モネの睡蓮でした。
以前に大山崎山荘でも何枚も見たけれど(2009・6・12ブログ参照)、この美術館にある睡蓮は、また表情が違っていて、ただ、睡蓮が描かれているだけなのに、その向こうにある風景が、すうっと思い浮かべられるような、見ていて引き込まれるような、不思議な力がありました。
夫が気に入ったのは、ゴーギャンです。力強い絵でした。
おちびは、この絵の犬の部分だけ切り取って机に貼りたいとか、この絵のお花に、もっとたくさん色を乗せて書き加えてみたいとか、勝手なことをたくさんたくさん言っていました。楽しんだみたいです。

それから、倉敷川沿いを歩き、船を眺めながらでお昼を食べたら、雨が降ってきました。アイビースクエアでお土産をのぞき、山口瞳さんが好きだったと言うエル・グレコでコーヒーを飲みました。なんだか懐かしい味、と言ったら、夫が「茶房のコーヒーの味だね」と。学生時代に時々行った、大学近くの喫茶店です。プラスチックパックではなくて、銀色のピッチャーにクリームが入って出てくるのも、同じ。少し酸味の利いた、おいしいコーヒーでした。

それから、重要文化財に指定されている大橋家住宅を見ました。入り口のかまちは切り目が入っていて、荷車が米俵を運ぶときは取り外したんだそうです。
奥座敷に行く格子が低く作ってあるのはなぜ?と、おちびが受付の人に聞いたら、「使用人がお客様に頭を下げながら、こちらに入ってくるようにらしいですよ」とおばさんが答えてくれたのに、おじさんが「いや、そんな、意味はないんです。格子も、荷車が入るときは取り外せるし。」と、ちょっと言い合いになって、おかしかったです。

白壁の続く、美しい町並みと、素晴らしい名画があるのに、ごった返していない美術館と。倉敷って、なんて贅沢な町なんでしょうね。すっかり好きになりました。

それから、電車に乗って、尾道まで移動しました。
たくさん歩いて、結構疲れました。

2009/12/1