金正日の料理人

金正日の料理人

2021年7月24日

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「金正日の料理人 間近で見た独裁者の素顔」 藤本健二 扶桑社

 

旅行中に持ち歩いて読んでいた本。読んでいてうんざりすることが多くて、なかなかたいへんだつた。
 
筆者は寿司職人で、調理師会からの求人に応じて北朝鮮に渡り、金正日の料理人となった。最初は一年契約だったが、金正日に気に入られて長く北朝鮮にとどまり、金正日の子どもたちと遊んだり、金正日本人ともレジャーに出かける仲となった。挙句、喜ばせ組の一人を気に入って、日本の妻子と別れ、結婚までしている。
 
食糧不足や燃料不足で国民が苦しみあえいでいる中、金正日がどんなに贅沢でわがままな生活をしていたのかがこの本を読むとよく分かる。時々宴会を開いては参加者に高級なコニャックを無理やり飲ませ、 一本空けたら景品を与えるなどという馬鹿な遊びがお好きな人だったようだ。そのせいで、藤本氏は一生コニャックを飲めなくなったと書いている。
 
金正日の酒蔵には世界中の酒が揃っていたけれど、日本のサントリーインペリアルだけがなかったので、藤本氏はわざわざ飛行機に乗って日本に買い付けに来たそうだ。その他にも、突然日本のよもぎ餅が食べたいと言う金正日のために日本にとんぼ返りして銀座の三越で大福やよもぎ餅を100個単位で買って帰ったりもしている。単価で計算すると、その時の餅は一個1500円相当かかったんだそうだ。
 
藤本氏は、金正日とジェットスキーで競争したり、拳銃の腕前を競ったりしている。誰も金正日に勝てないのに、自分だけは勝ったと得意そうに書いているのだが・・・。そういうところが気に入られたのかもしれないな、と思う。
 
全編を通して流れているのは、金正日はものすごい権力者であって、そんな権力者のそばにいて仲良く出来た自分は幸せ者だった!!という藤本氏の気持ちだ。最後は怖くなっちゃって逃げてきたけど、楽しかったなあ、いいところだったなあ、また行きたいなあ、と考えているみたいだ。うーむ。そういう人だから、気に入られたのだろう。
 
まじめに読んでいると、あちこち突っ込みどころは満載なのだが、とりあえず、北朝鮮で何が起きているのか、その一端を知るには貴重な資料だ。やれやれ。

2013/8/16