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「RURIKO」 林真理子 角川書店
伝記って好きなんだよね。一人の人間の一生を追いかけるのって、とても面白い。でも、林真理子だからなー、ってちょっと考えた。「白蓮れんれん」や「ミカドの淑女」なども読んだことがあるけれど、彼女の書く女性伝は、なんとなく実感が薄い。外側から事実を追うのはうまいけれど、感情がひしひしと伝わるという感覚がない。
なんて思いながら読んだら、これもやっぱり、今ひとつ感情が伝わらなかった。ヒロインにのめり込めないって言えばいいのだろうか。
林さんは、こういうの書きたいんだろうな、って思う。生まれつきのすばらしい美貌ゆえに、自分の美貌に無頓着でいられる。次々にスターと恋愛し、でも、それにふりまわされない。そんなこと、なんでもないことだわって認識できる。そんな存在に成り代わった気分でいられて、書いていて楽しかったんだろうな。
・・・なんて、私、意地悪。
登場人物が実にきらびやか。
満州の甘粕大佐が最初だもんね。それから、石原裕次郎、北原三枝、小林旭、美空ひばり、石坂浩二、デヴィ夫人もちょっとだけ出てくるし、渡哲也なんて、ほとんど小者扱いだもの、すごいわ。
この物語を読んで、ルリ子さんご本人はどうお感じになったのかしら。ヘーちゃんの扱いはひどいなー、と思ったけど、そんなものなのかしら。夫婦で、こんなに何も分かり合っていなかったってこと?
この物語の通りの人だとすると、るり子さんは、ほんとうにお人形のように美しく生きた人だということだわ。でも、あんまり羨ましくはないなあ。
2011/9/7