「来ちゃった」

「来ちゃった」

2021年7月24日

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「来ちゃった」酒井順子・文 ほしよりこ・画 小学館

大人向け高級女性誌「プレシャス」における旅の連載をまとめた本。「プレシャス」を私は知らなかったのだけど、30代後半から40大の大人の働く女性をターゲットにしたお金持ち向けの雑誌のようですな。しかし、この本の旅は、それほどゴージャスというわけもなく、ただ、のんびりと足の向くまま気の向くまま、各駅停車に乗ったり、人が滅多に行かないような離島に行ったり。淡々と旅して回っているので、読んでいても感情がそれほど揺り動かされません。

いつの日か高知に行きたいと思いながら行けずにいる私。もし行ったら、ここに泊まって、あそこに行って、と妄想旅だけは何度もしています。短縮バージョンのお遍路体験隊の途中でオーベルジュ土佐山に泊まった、とあったので、おお、いつの日か私が泊まるあの宿ね!と思ったのに、
「遍路の途中でオーベルジュとはなんとも軟弱ではありますが、途中で一回くらい羽根を伸ばすのもほら、四十代には必要ではないでしょうか・・・・?(と、言い訳)」
(「来ちゃった」より引用)

と、あっさり。他のどんな場所もこの調子で、さらりと描かれています。だから、うわー、ここ、どーしても行きたいっ!と思うほどの吸引力はないのですな。たぶん、それがこの人の持ち味なのでしょう。

ほしよりこさんのなんとも力の抜けた挿絵が、そのさらさら感を更に強化しています。

2015/3/2