あの頃、忌野清志郎と

あの頃、忌野清志郎と

2021年7月24日

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「あの頃、忌野清志郎と ボスと私の40年」

片岡たまき 宝島社

 

清志郎が好きだった。学生時代、ラジオから流れてくる「トランジスタラジオ」にやられた。詩人だと思った。派手なメイクで教授(坂本龍一)と歌っているのにぶったまげたりもしていた。それから時がたち、「カバーズ」を出す勇気に打たれた。3.11の少し前から、毎日「カバーズ」を聞きながらウォーキングしていた私。いまさら原発が事故を起こすなんて・・・と、背筋が凍った。
 
最後に清志郎が「徹子の部屋」に出た時、もうほとんど彼は喋らなかった。徹子さんが途方に暮れたみたいに一人で喋りかけては一人で答えていて、清志郎は困ったような顔をしていた。ああ、もうダメなんだな、と思ってしまった。それからしばらくして、訃報があった。
 
この本は、RCサクセションの大ファンになった中学生が、RCのところで働きたいと願って、ずっと彼らを追っかけて、本当にスタッフになった話だ。夢みたいな話だ。イベント手伝いから衣装を担当し、マネージャーになり、ゴーストライターも務めた作者。清志郎は普段は静かで優しくて、でも舞台ではエネルギッシュでぶっとんでいた。それを改めて教えてくれる本だった。
 
ときどき、清志郎と奥さんの石井さんのエピソードが出てくる。ほとんど表に出ない人なんだけど、清志郎はある歌の中で「石井さん、僕は君が好きだ」ってちゃんと歌ってあげている。でもバックでこっそり「あんどーさーん」とか、別の人の名前も呼んじゃっていて、いいのか、おい、って思ったものだった。でも優しい人だった、清志郎。
 
いい人はなんで早く死んじゃうんだろう。私が好きになる人はみんないなくなる。景山民夫、中島らも、勘三郎、清志郎。がんばりすぎたからなんだろうか。
 
 

2015/1/14