いくつになっても、絵本は楽しい

いくつになっても、絵本は楽しい

2021年7月24日

いま住んでいる地域は、学校の図書ボランティア活動が盛んです。
教育委員会の主催で、図書ボランティアの交流会が定期的に行われて、いろいろな講演や講習が受けられますし、それ以外にも、図書館主催の読み聞かせやストーリーテリングの講習会がいくつも行われています。

おちびも六年生になってしまって、私も、保護者としての小学校の読み聞かせ活動はそろそろ卒業です。なんとなく寂しいし、いろいろ習えるのも今のうちだと思って、今年はずいぶんたくさんの講習に参加してきました。

ストーリーテリングと絵本の読み聞かせ(と、朗読)は違うものだということも、また、読み手、語り手によって、その方法論もずいぶん違うということも、だんだんに分かってきました。おいしい料理を作って、さあどうぞと差し出す人もいれば、素材そのもののをそのまま渡して、あなたなりに味わってね、という人もいます。こってりした味わいが好きな人も、あっさり、さっぱりした味を好む人も、いろいろいます。私は私の持ち味を知って、それを活かすために何を選ぶのか、決めるのは自分自身であると言うことも、分かってきました。

先日は、中学校で読み聞かせをやっている学校司書さんのお話を聞いたのですが、金髪のすげー兄ちゃんが、実はうさこちゃんが好きだったりするという楽しい話を聞きました。

その金髪くんは、どのページを開いても、うさこちゃんが自分を見ている、と言ったのだそうです。それが、ものすごい発見だったらしい。生まれてこのかた、絵本なんて読んでもらったことがなかったんだそうです。彼がうさこちゃんを手に持ってる写真と、うさこちゃん絵本をすすめる文章を書いたポスターが学校に貼られたそうです。それは、彼の大変なお気に入りだったんですって。その話を聞いて、大笑いしました。笑いながら、少し泣きたくなりました。

彼が、うさこちゃんに出会ったからと言って、じゃあ、日々の態度が良くなったかというと、全然そんなことはなくて、相変わらず悪くて先生泣かせなんだそうですが、それでも、うさこちゃんに出会ったことは、彼に取ってはとても意味があることなんだろうと思いました。

学校で読み聞かせをする前に、私はよく家で予行演習をしました。小学生のおちびはもちろんのこと、当時高校生だった息子も、一緒に聞いて、ずいぶん意見を言ってくれました。付き合ってやってる、という素振りでしたが、彼らは彼らなりにその時間を楽しんだんだろうと私は思います。誰かに絵本を読んでもらうことは、いくつになったって、楽しいことです。

市の講習会の講師の方が、大学生相手に「いないいないばあ」を読んだら、やっぱり笑うのよ、と笑ってらっしゃいました。授業が始まるまで、時間があるときに、絵本を読むようにしていたら、どんどん集まりが良くなって、みんな、前の方で楽しみに待ってくれるようになったのだそうです。むさくるしい大学生が、「いないいないばあ」で笑ってる姿を想像したら、とても愉快になりました。

私の活動ですが。二年ほど前までは、学校の教室で、みんなの前にたって読み聞かせる方式でした。転校で今の学校にきてからは、休み時間に、聞きたい子だけが集まって、小さいスペースで、座ってお話をするスタイルです。この方法になってから、絵本の選び方が変わりました。広い教室では、あまり絵に頼る本を選べないのです。どうしても、文章、物語に頼って、本を選んでいましたが、今は、絵の力がきちんと伝わります。そして、そうなって初めて、私は絵本ってすごい、ということに気が付きました。絵だけで、ほんとうに色々なことが伝えられる。それも、言語化されないだけに、ひとりひとりの心のなかで膨らむものが、とても大きいのです。

もう少ししたら、中学校の図書ボランティアに移行することになります。中学では読み聞かせなんて無理かな、と思っていましたが、何らかの形で、続けられないかな、と思うようになりました。いくつになっても、絵本は、とても楽しい。一人で読むのも楽しいけれど、だれかと一緒に聞いたり読んだりすることで、思いがけずに世界が広がることもあるものです。なんとかうまく機会を作れないかな。興味を持ってくれる子がいないかな。まだまだ、先の話ですが。楽しい絵本をたくさん用意して、いつか、きっと、読んであげられる日が来ることを、楽しみにしたいと思います。

2010/12/17