うからはらから

うからはらから

2021年7月24日

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「うからはらから」 阿川佐和子 新潮社

言わずと知れた阿川佐和子さん。インタビュアーとして、コメンテイター(?)として、必要なときに必要なことをきっぱりといいながら、どんな人でも手のひらで転がせるお嬢さん、じゃなかった、オバサンである。エッセイがお上手なことは知っていたが、小説も素晴らしい。阿川弘之氏の娘さんだとか、テレビでよく見る人だとか、そういう余計な情報なしに、ただこの本を読んだだけでも、十分すごい小説家なのである。

離婚したけれど元夫と時々会っている娘。その親も、離婚し、父親は連子のいる女性と再婚している。けれど、元妻も、時々、現れる。連子はめんどくさいキャラだし、新妻も、なかなか勇敢な人である。娘には、新しい彼氏もいる。元夫には彼女がいるけれど、その子は元妻の部下で・・・。ああ、ややこしい。ややこしいけれど、これが上手に整理されて、どの人も、優しい目で描かれている。どの人も、好きになれる。

いろんな人生があるよなあ、と思う。それぞれに、愛おしい、と感じてしまう。そういう人間をちゃんと書いて、読み手を優しい気持ちにしてくれる。大変なこともあるけれど、なんとかなるよなあ、と思わせてくれる。

これは、貴重な小説ですぞ。

2011/11/15