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「うまれてきた子ども」佐野洋子 ポプラ社
うまれたくなかったからうまれなかった子どもは、ライオンなんて、こわくない。カにさされたってかゆくない。いぬになめられたってくすぐったくない。うまれてないから。
でも、おんなのこがおかあさんにばんそうこうをはってもらっているのをみて、うまれた。「おかあさーん、いたいよう」とばんそうこうをはってもらった。おかあさんにだきついた。
この子は、いつ生まれたのだろう。生まれてすぐ絆創膏を貼ってもらってるけど。
めんどくさい思春期のうちの子どもは、うまれたくなかったみたいな顔をして、何を言われても知らん顔をして、痛くも痒くもないようなふりをしている。でも、時々、おかあさーん、と抱きつきはしないけど、痛かったり痒かったり、なんとかしてくれと助けを求めてくる。
生まれてこないと、痛いのも痒いのもわからない。おかあさんにも抱きつけない。生まれてるのって、疲れるけど、いいよね、と思う。私は、これを読んで、そう思う大人である。
2014/10/26