キュリー夫人伝

キュリー夫人伝

2021年7月24日

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「キュリー夫人伝」エーヴ・キュリー 白水社

 

キュリー夫人の伝記は子供の頃に読んだような気がする。お金がない中で勉学に励み、寒さのあまりに椅子を身体の上に乗せて、重みを暖かさと感じようとしたエピソードを覚えている。その話は、この本にも登場した。
 
この本は、キュリー夫人の次女であるエーヴ・キュリーによるものである。落ち着いた理知的な文章に心洗われる思いで読んだ。
 
キュリー夫妻は、物理学の研究が本当に好きで、それがすべての人だった。だから、ラジウムの特許を取ることを放棄し、情報のすべてを公表した。それは科学の進歩に大いに貢献したが、そのためにキュリー夫妻は富を得ることができず、自分たちの実験のためのラジウムを入手することができないほどだった。ノーベル賞を受賞した時、まだ彼らは自分たちの実験室すら持っていなかったのだ。彼らは世俗の名誉や富をまったく求めなかった。それが改めてよくわかる。
 
ピエール・キュリーを交通事故で失った時のキュリー夫人の様子は、読んでいて胸が苦しくなり、恐ろしいほどだった。彼女が生きていく上で、これ以上の困難はなかったのだ。
 
キュリー夫人は二回ノーベル賞を受賞し、彼女の長女もまた、受賞した。なんという頭脳の血筋なのだろう。
 
他のものすべてを投げ打って、ひたすら勉学と研究に打ち込んだキュリー夫人の物語を読むと、私はなんと怠け者なのだろうと思う。何かに一心に打ち込むのはなんと美しいことなのだろうと思う。

2014/11/4