妄想彼女

妄想彼女

2021年7月24日

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「妄想彼女」地主圭佑 鉄人社

 

図書館で借りたんですけどね。図書館、よくこれ買ってくれたなーと思うほどやばい本です。妄想がただごとではない。
 
ページが上下で二つに分かれていて、上は妄想のストーリー、下はそれをつくり上げるための舞台裏、写真の撮り方の解説になっている。
 
作者は「ひとりデートマスター」と言っているように、彼女なんて全くいないんだけど、妄想上の彼女と出会い、恋をし、同棲を経て結婚、子どもまで生まれちゃう日記をSNS上に作り上げてしまうのだ。
 
犬を飼い始めて散歩先で彼女と出逢う。犬なんていなくたって、リードを三脚につないで写真を撮る。うちの犬は元気がいいからなかなかフレームに収まらない、ということにすればいいのだ。
 
たった一人でも、鏡を駆使して、仲間たちとの楽しい合コンの写真を撮れる。そこに人数不足の助っ人として来ていた散歩先で出会った彼女と再開して恋が始まるのだ。
 
はじめてのデート、付き合い始めた二人。片手だけにファンデーションを塗り、マニキュアを塗れば、彼女とのイチャつき写真だって撮れる。安いウィッグを一つ買えば、寄り添う後ろ姿やキスシーンだって何とかなってしまう。・・・・この辺りから、かなり変態性が強くなってくるのだが、がんばろう!
 
二人で手を繋ぎ合う影法師、ドーナツを「あーん」してもらう場面、ちょっとした浮気、仲直りの温泉旅行。貸し切り露天風呂ではしゃぎ合う写真撮影のため、バスタオル巻いて渓流に入った根性には恐れいった。ひと目も怖いし、寒さも大変。そんなエネルギーがあるなら現実の女性に向けろよ、とこの辺りでかなり強く思う。
 
海外旅行に行ったことにするためには空港にアロハを着ていけばいい。ハワイのビーチを演出するなら大田区の海辺でいい。対岸の向上や倉庫を隠すには身を張って、基本アップで撮るだけだ。
 
そして、ついにプロポーズ、結婚。結婚式の写真に付き合わされたリアルお父様のうつろな表情にはなにか深いものを感じずにはいられない。すごいぞ、ここまで来ると。
 
ここまで「彼女のいる僕のしあわせ」を対外的にアピールしたところで、この人の生活は、独り者、仕事ほぼなし、暇な日々なのである。でも、本が一冊で来たもんね~。これだけの企画力、人にどう思われようと自分のやりたいことをやり通す実行力があるのなら、もっとリアルな世界に活かせよ!と思わずにはいられないおばちゃんであるが。
 
実際にこんな風に自分の幸せをSNS上で演出して日々を暮らしている人って結構いるんだろうなあ、なんて思ってしまった。それはそれで楽しいのかもね。

2015/5/1