かたづの!

かたづの!

2021年7月24日

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「かたづの!」中島京子 集英社

「小さいおうち」の中島京子さんによる史実に基づいたフィクション。南部八戸から遠野へ国替えした八戸氏二十一代の女性当主祢々・・清心様の生涯を描いた物語。八戸当主である夫を若くしてて失った祢々は、家と土地を乗っ取ろうとする叔父の奸計を退けるために自ら女当主となり、縁談を遠ざけるため出家して尼僧、清心となる。清心は、賢く優しく気丈な女性だ。

「かたづの」は、祢々が幼いころに遊んだ一本角の羚羊、そしてそれが亡くなったあと、角だけが宝物として大事に残されたものだ。かたづのは意思を持ち、見聞きし、時に誰かに取り付いて何かを伝えることもあり、常に祢々のかたわらにいて助けた。そのかたづのの目(?)を通して語られた南部藩八戸、そして遠野の歴史である。

関ヶ原の戦い、大坂の陣から家光の治世に至るまでを東北の片隅からの視点で描いている。そこには羚羊の角だけでなく、カッパや座敷わらし、屏風画の中のペリカンや雀までもが息づく不思議な世界でもある。歴史的ファンタジーでもある物語だ。

最初、とっつきにくいかと思ったが、あっという間に引きこまれた。最後までぐいぐい引っ張って行かれる面白い物語だった。

2016/5/26