カラシニコフⅡ

カラシニコフⅡ

2021年7月24日

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「カラシニコフⅡ」 松本仁一 朝日新聞社

「カラシニコフ」の続編。前作はアフリカにおけるカラシニコフの話であったが、今回はアフリカ以外の国々、中南米、中近東、アジアなどの国々におけるカラシニコフについて書かれている。

コロンビアのカラシニコフを調べてみたら「ノリンコ」という刻印が打ってあった。ノリンコとはなんだろうと調べたら、なんとそれは中国製の銃なのだった。「だまされて」の中で、見本さえあればなんでも同じ物を作っちゃう中国の工場の話が載っていたが、正に、あれである。

旧東ドイツでも、カラシニコフは製造されていた。ゲリラの銃を押収して、ドイツに刻印ナンバーで問い合わせると、いつどこで作られてどこに輸出された銃なのかが一発でわかる。同じように中国に問い合わせると必ず「現在調査中だが詳しいことはわからない」と回答が帰ってくるという。どちらもお国柄そのものだわ、と笑ってしまう。

カラシニコフの口径を小さくした「カラコフ」がパキスタンで作られている。口径が小さくなった分、敵に与えるダメージが小さいのかというと、これが違うのだ、という記述には、心底ぞっとするものがあった。

しかし茨城県にある自衛隊武器学校で、幹部の一人は、今の戦争では小口径のほうが効果的なのだといった。
「口径の大きい弾丸は力が強く、即死の率が高い。逆に腹部などに当たると貫通してしまって大きな損害にはならない。小さい弾丸は力が弱いため即死率は低い。軽いため腹部などに入っても貫通せず、体内で回転して周囲の臓器をずたずたに破壊する。当然、痛みはひどい」
撃たれた味方兵士が死んでしまった場合、部隊は戦闘行動を続けることができる。遺体はあとで収容すればいい。しかし重症を負ったら後送しなければならない。一人を後送するのに、かついだり抱いたりで三人ほどの同胞の手がかかる。一個分隊を約一〇人として、一人が負傷したら、本人を含めて四人が戦線から離脱することになる。戦闘能力は半分近くに落ちてしまう。

(引用は「カラシニコフⅡ」松本仁一 より)

カラシニコフは優れた銃である。雑に扱っても故障しにくく、素人や体の小さい者にも容易に扱える。世界中の紛争地帯には、この銃があふれている。もし、カラシニコフがなかったら、世の中は少し違っていたのかもしれないと思うほどに、人々はカラシニコフで殺し合っている。

この銃を通じて、人間というもののあり方が見えてくるのは、皮肉なことだ。私たちは、いつになったら殺し合わない世界を作ることができるのだろう。武器を持たずに安心して生活できる国に住んでいることのありがたさを改めて思う。そういう場所が少しでも増えて欲しいと願わずにはいられない。

2013/6/11