ことばはいらない

ことばはいらない

2021年7月24日

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「ことばはいらない」ジョンソン祥子 新潮社

 

千原ジュニアの兄、せいじには夕くんという息子がいる。ジュニアは夕くんが可愛くてならない。でも、最近かなり成長してしまった夕くんはジュニアとあんまり遊んでくれなくなった。彼はそれが残念でならない。しかし、ジュニアの妹には、もっと小さい息子がいる。こいつが最近は遊んでくれるようになった。その子がこれまたとんでもなく可愛いのだそうだ。大小二人の甥っ子と一緒に三人で京都の水族館に行った時は、この世にこんな幸せなことがあるのかと思ったという。ところが、最近、芸人仲間に次々に子どもが生まれて、はたと気づいたそうだ。子供はみんな、もれなく可愛い。俺の父性はどこまで行くのか・・・・。と、「にけつッ!!」でジュニアが言っていた。
 
千原ジュニアが何も心配することはなくて、我々人間の大半は、どうやら歳を取れば取るほど、小さな人を見るとわけもなく心がかきむしられるようにできているらしい。かくいう私も最近は小さい人を見ると、それだけで胸が熱くなる。昨日、バスに乗ったらベビーカーの赤ん坊にバス中のお年寄りが釘付けになっていて、じいちゃんもばあちゃんもでろでろの笑顔になっていた。
 
「ことばはいらない」はアメリカに嫁いだ作者が言葉の壁に悩んでいるころに飼い始めたマルという犬との生活をブログにアップしたことから始まった。その後、息子の一茶くんが生まれ、マルと一茶は兄弟のように成長していった。その姿を写した写真集がこれである。
 
マルと一茶くんは大きさも同じくらいで、笑ったり驚いたり泣いたり眠ったりも同じようにしている。とても深いことを考えているようにも見えるし、ただただ楽しんでいるだけにも見える。小さい二つの命を見せられて、私はわけもなく胸がかきむしられてしまう。犬と人間の赤ん坊が並んでいるだけなのに、なんでこんなにいろんな思いが湧いてしまうのだろう。不思議でならない。
 

2015/6/26