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「おともだちできた?」恩田陸 講談社
「蜜蜂と遠雷」の恩田陸である。新しい絵本を恩田陸が書いたというので、おお、そうかそうかと手に取ったら、こんな目に遭うのである。恩田さん、もともとホラーも書く人だったっけ。気を許してはいけなかったのだなあ。
「ともだちひゃくにんできるかな」は「できるだろうか?」という疑問形の詩だったはずなのに、なぜだか、子供はともだちが多ければ多いほどよろしいと世の中では勘違いされてしまっている。でも、実際には100人も友だちがいるやつって、絶対何処かで我慢してるぜ?気が合って、楽しく過ごせる相手が100人もいるわけがない、と偏屈な私は思わずにはいられない。ともだちなんて、厳選して数人いれば十分である。
なんでそんなことを言うかと言うと、私は転勤族の子で、転校するとすぐに周囲の大人に「おともだちできた?」と聞かれたのである。めんどうだから、「できたよ」としか答えない。そこらのクラスメートととりあえず話ができたら、それでオッケー、と思うしかないからであるが、大人は私の答えを聞くと、もう安心だ、という顔で行ってしまうものだった。私は大人を心配させない子供だったからね。
この絵本の主人公の女の子も、お引越しして、一人ぼっちで遊んでばかりいて、大人たちにしつこく聞かれるのである。「おともだちできた?」と。黙っていた彼女が、「できたよ」と、ちょっとぞっとさせるような笑顔で答える。そこから、彼女の「おともだち」が登場する。
おかあさんも、おとうさんも、きんじょのおばさんも気づかないけれど、となりのいぬは気づいている。おともだちの正体を。
絵の端っこの方で、実は、おかあさんが泣いていたりするのが不気味である。いろんなことを示唆する絵本である。
子どもには、特に、勧めようとは思わないなあ。
2017/8/1