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「蜜蜂と遠雷」恩田陸 幻冬舎
言わずと知れた、直木賞、本屋大賞ダブル受賞作品。ピアノコンクールを巡る物語。音楽ネタだけに、吹奏楽部バリバリの娘が帰省中に「これ、部活でみんないいって言ってた!」と言うし、夫はこの本の中に出てくる曲が全部載ったCDを早速注文するし、そのCDは品切れでなかなか届かないし。そもそもこの本も予約を入れてからずーっと順番が回ってこなかったし、後ろにまだ何百人と待っているし。大変な人気っぶりである。
ピアノコンクールの審査員、出場者、その師匠や支える人々、そしてピアノ演奏そのものが丁寧に描かれている。でも、これってファンタジーだよな。亡くなった巨匠が「ギフト」としてコンクールに送り込んだ天才少年は、養蜂家の息子。各地を転々とする彼を巨匠がたまに訪れてはピアノを教えていたという。何しろ、彼、ピアノを持っていないっていうから。
同じくピアノを持っていなかった武満徹がその昔、ピアノの音がすると、その家を探し出しては頼み込んで弾かせてもらっていた、というエピソードを思い出す。立花隆の「武満徹・音楽創造への旅」を恩田陸も読んだんじゃないかと密かに思う。
現実にはありえないよな、ピアノを持ってない少年が、たまに借り物を弾くくらいでコンクールに出るとかって。しかも、彼、調律までこなすし、オーケストラの立ち位置まで決めるし。ファンタジーだ。でも、物語の中では説得力を持っちゃうからすごい。
分厚い本なんだけれど、「あっという間に読めるよ」と夫から渡された。本当に、あっという間だった。これの前に読んだ「エリザベス・テイラー」は同じくらいの厚さだったけど、一週間かかったというのに。
2017/7/24